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【ブログ】土質試験部インタビュー|土木管理総合試験所が開発したロボットって?

土木管理総合試験所が開発したロボットがあることを知っていますか?
自動試料分取装置という名前で、人に代わって土質試験の前処理をするロボットです。
今回は開発に至った経緯や開発中の苦労、今後の展望などを土質試験部の熊田部長と森川課長にお伺いしました。

「機械にやらせればいいじゃん」と言われたのがきっかけ

―自動試料分取装置とはどのような装置ですか?

森川課長:試料は試験ごとに最大粒径が決まっているので、人がふるいなどを使って取り分けてから次の工程に回します。それを機械で行えるようにした装置です。

熊田部長:もう少し詳しく言うと、試験で使用する試料は、土のう袋7分目~8分目まで入ったものが少なくとも5,6袋宅配便で届きます。土質試験の前処理として、袋から開けた試料を混ぜた後、各試験に必要な分量に取り分け、試験規定範囲外の礫を取り除く作業を手作業で行います。これは体力的負担が非常に大きいので機械で対応することはできないかと考え、取り入れた機械になります。

―自動試料分取装置の開発に至った経緯を教えてください。

熊田部長:開発を考え始めたのが2016年なので、5、6年前になります。その頃土木管理総合試験所は、会社として成長していく中で試料の入荷が増え始めましたが、人がなかなか見つからず人手不足の状態でした。しかし我々の作業はどうしても手作業でないといけないという部分があって。今いる人材にどんどん負担がかかってしまっており、大切な人材を潰しかねない、というのが責任者である私にとって非常に悩みでした。
そんな時にある会議で、ひょっとしたら冗談だったのかもしれませんが「機械にやらせればいいじゃん」とぽろっと言われた方がいました。その時に機械になんとかできることはないだろうか、そうすれば体力的に不安を抱えている人も作業できるのではないかと考えたのがきっかけです。

自然物を機械で扱うのは難しい

―開発はどのような流れで行いましたか?

熊田部長:物を作るということは全くやったことがなかったので、ご協力いただける設計会社さんを探すしかないと思っていました。会社探しに大体半年ぐらいかけたと思います。
そして実際に業者さんに足を運んですり合わせをし、構想やプランを挙げていただくのに半年。図面を書いてもらって徐々に作り上げていくのにさらに1年ぐらいかけました。
実際に試験センターに入れたのは2019年の1月ですが、そこからすぐに使えるわけではなくて、実務に取り入れながら改善をしています。今のように業務に入れて問題ないという状態になるには、そこからさらに1年ぐらいかかりました。

―設計会社さんは数社比較して決められたのですか?

熊田部長:本当は比較をしたかったのですが、手あたり次第に連絡して「挑戦させてください」と言ってくれた業者が1社しかなくて。今であればいろいろなところが手を挙げてくれると思いますが、当時は全然見つからなくて門前払いを食らいまくりました。「自然物(一定の品質でないもの)をロボットに準備させる作業が一朝一夕でできるとお思いですか?」ってお叱りを受けたぐらいです。

―手作業でされていたものを機械でできるように開発するのはすごく難しいんですね。

熊田部長:製造業のようなものは一定の品質のものに対して対応していくので意外に機械化しやすいですが、我々が扱っているのは自然のものなので、予測がつきません。ロボットは性能はすごくいいですが、人間に例えると目隠しをして、手にはゴム手袋を5重ぐらいつけて作業しているようなものなので難しいです。

どんな土でも効率よく攪拌できるように

―開発中にこだわったところはどこですか?

森川課長:実際納品されていざ動かそうと思ったときに、まず土の攪拌が上手くできませんでした。はじめは金属のヘラのようなものがただ回転するだけだったのですが、試料の種類によってはうまく回らなかったり土の中に入っている礫が攪拌するバケットと羽の間に噛んじゃって動かなくなったりするというトラブルが多発しました。そこで根本的に羽の形状を変えて、スクリューのような形に変更しました。スクリューの正転・逆転の回転角度の設定もこだわった点です。

熊田部長:今の話でいうとどんな土でも効率よく攪拌できるようにするというところと、あとは土の仕分けの仕方にこだわりました。試験によって必要な土の分量はそれぞれ違いますが、それを取り分ける方法は文献で決まっています。それをどうやって機械にさせるかをこだわりました。

―開発中に苦労したところはどこですか?

熊田部長:石の大きさを取り分ける時はふるいにかけますが、土によってうまくふるい目を通るものもあれば通らないものもあって。さらさらしたものは通りやすいんですけど、粘土みたいなものはダマになったりくっついちゃったりして通らない。あとは水分量によってもくっついちゃったり通らなかったりして、そこが非常に大変な部分です。

―ふるいに通りやすい通りにくいの問題は今は解決されていますか?

熊田部長:現在進行形です。なので、機械にセットする前に人の目を使って土の判別をしています。機械の改善は今後もずっと取り組んでいきます。

“誰でも使えるような機械”が開発目標のひとつ

―自動試料分取装置の導入後はどのような変化がありましたか?

森川課長:体力的にこれまで男性がやっていた業務ですが、今機械のオペレーターは女性がメインになっています。それだけでも重労働が極端になくなったことは証明できると思います。
また、機械が動いている間にオペレーターはほかの作業を行っています。1試料動かしている間にもう1試料分の仕事もやっているような形で効率が非常に良くなっています。

―自動試料分取装置について、社員から何か感想や反応はありましたか?

森川課長:重労働を減らすための機械というので、特に女性にやって頂きたいというのが私の中にあったのですが、女性は機械に苦手意識を持つ方が多いことが導入当初心配でしたが、そんな心配もいらないくらい興味を持ってくれました。今では複数の女性社員も機械の操作をできるようになっていますので、メインのオペレーターの方が休んでも他の方が動かしてくれます。誰でも使えるような機械というのが元々の開発目標のひとつでもありましたので、上手くいっているのではないかと思っています。

熊田部長:最近では自動試料分取装置があるということが定着していますが、導入直後は珍しい機械だったのでみんな興味をもって見ていました。

森川課長:ラボ見学のときも見ていただくようにしています。反応良いですよ。

―社外からの反応は何かありましたか?

森川課長:何社もある試験機メーカーのどこもが手掛けていない機械があるということで、現場の方などが来社された際にもすごく興味をもって頂いています。ロボットアームはテレビなどでは見ていると思いますが、実際に動いているのを見るのは初めてという方も多いみたいです。最初のころは株主総会でもデモンストレーションで動かしていました。

フル稼働しているような機械にしたい

―最後に、今後の展望を教えてください。

森川課長:今ではいろいろな土に対応できるようになっていますが、一部まだ対応できていません。今の機械をさらに改良して、ほとんどの土に対応できるようなものに仕上げていきたいです。せっかく導入したので、すべての種類の試料に対応してフル稼働しているような機械にしたいです。

熊田部長:できるかできないかは別になりますが、現在は中央試験センターにしか入っていないので、もう少し成熟、小型化して西日本試験センターと東日本試験センターにも入れたいです。また、今年作成した土質試験管理システムと自動試料分取装置を連携させてネットワークで繋げていきたいという展望もあります。


今回インタビューにご協力してくださったのは、土質試験部の熊田部長と森川課長でした。
貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


土木管理総合試験所のYouTubeでは自動試料分取装置が実際に動いている様子を見ることができます。

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光本 榛名
光本 榛名
部署:マーケティング部

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