【ブログ】インタビュー|IoTによるひび割れ幅モニタリングとは?
皆さん、ひび割れ幅の経過観察ってどのようにされていますか?やはり毎回クラックスケールを当てて測定されていますか?
当社ではIoT時代の遠隔モニタリング技術として、パイ型変位計で簡単に連続測定できる装置を製作いたしました。
今回は、この装置の概要と製作経緯を技術第一部門の松山さんにお伺いしました。
―始めにひび割れ幅モニタリングとはどのようなものか教えてください。
松山さん:まず、コンクリートは伸びる素材ではないので、温度で膨張したり乾燥で収縮するとひび割れが入りやすい材料です。ひび割れが入ると中の鉄筋が腐食するなどの問題が生じるので、ひび割れはコンクリートにとって重要な指標になります。ひび割れを測る際、一般的には人が毎回現地に行ってクラックスケールを当てて測らなくてはいけません。しかし、毎日遠方に測りに行くとなると大変です。教科書にはパイ型変位計を設置して測定する方法も載っていますが、現場で測定しているところを見たことがありません。一般的にはデータロガーに変位計(センサー)を繋いで連続的な測定を行っていると思いますが、この方法だと定期的にデータ回収に行かなくてはいけません。当社で製作したひび割れ幅モニタリングの装置では、データをクラウドに転送することができるため、アプリを使用して遠隔地でもリアルタイムでデータが見られるようになっています。
図1:ひび割れ幅モニタリング装置
―製作しようと思ったきっかけを教えてください。
松山さん:現在、社内では効率化や生産性向上として、遠隔観測システム、遠隔技術支援を入れているのですが、ちょうどそのタイミングでソフトフェア・ハードウェアの開発をされているカウベルエンジニアリングさんからIoTで遠隔支援が出来るというお話をいただきました。どんなセンサーでも取り付けられて、簡単にデータをクラウドに上げられるとのことだったので一度試してみたいと思っていて、そこで思いついたのがパイ型変位計でした。センサーを提供しますので、試しに繋げてみてください、とお願いしたのが発端です。
図2:パイ型変位計
―製作はどのような流れで進められましたか?
松山さん:カウべルエンジニアリングさんにパイ型変位計を提供し、いくつか要望をお伝えしながら製作していただきました。
―製作中にこだわった部分はありますか?
松山さん:パイ型変位計の信号はとても小さいので増幅器を取り付けてくださっていたのですが、それに加えて増幅器のつまみでゼロ設定をする機能を付けていただきました。これはリセット機能のようなものです。測定開始時のひび割れ幅の値をゼロとして、そこからどのように幅が増減するのかを連続測定したいと思っていたのですが、アプリ上でリセット機能を設けるとなると共用のアプリではなく専用のアプリが必要そうでしたので、まずは安価で簡易的にゼロ調整できるつまみを増幅器に設けてもらいました。
また測定されたデータは、最大値、最小値、平均値がグラフで示されていますが、それだけだと何が原因で変化があったかが分からないので温度のデータを同時に測定できるようにしたところもこだわった点です。
図3:測定結果のグラフ
―現在社内で導入はされていますか?
松山さん:長野にあるコンクリート試験室に取り付け、計測中です。今度は、現在建設中の苫小牧ラボにも取り付けて、乾燥収縮の観測を行ってみたいと思っています。
―導入してからまだ間もないと思いますが、社内の反応はいかがですか?
松山さん:営業部門からは是非お客様に提案したいという話をもらい、提案書を作成しました。ひび割れから白い析出物が出てきてしまっている重要構造物に対して、ひび割れが進展して建物に影響が出ることになっては大変なことになりますので、ひび割れの常時監視をしてみませんか?という提案書を作りました。
ーモニターを募集しているとお伺いしたことがあるのですが、モニターになられたお客様はいらっしゃいますか?
松山さん:今のところはいらっしゃいませんが、引き続き募集しています。
―ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。
松山さん:現在はセンサーと装置(ゲートウェイ)を有線で繋いでいますが、これを無線で繋げられるとお客様がより使いやすくなると思います。また、山奥などの現場で行われることも多いのでコンセントからの電源ではなくバッテリーで出来るようにするなど、電源と通信環境を改善したいです。
様々な現場条件のひび割れにこの装置を取り付けてみて、有効なデータが取れるのか、使いやすい装置になっているのかをもっと検証したいと考えています。実験的に測定をさせていただける現場や構造物を募集しておりますので、ご協力いただける方がいらっしゃいましたら是非お声掛けください。
今回インタビューにお答えいただいたのは技術第一部門の松山さんでした。
ご協力ありがとうございました!
ひび割れ幅モニタリングについて、詳しくはこちらをご覧ください。