【ブログ】アスベストの基本と法改正について
アスベストは健康被害があることが知られており、ニュースにも度々取り上げられます。
しかし、実際にどのようなものなのか知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回はそんなアスベストの基本と法改正についてまとめました。
アスベストとは
アスベストとは、石綿(せきめん、いしわた)とも呼ばれる天然の繊維状けい酸塩鉱物です。耐熱性、絶縁性、耐薬品性、保温性などの優れた性質を持っていることから、「奇跡の鉱物」と呼ばれていました。それに加え比較的安価であるため様々な用途で使われ、使用用途は3000種以上と言われています。
しかしアスベストの繊維はとても細いので大気中に飛散しやすく、人が吸い込むと、肺がんや悪性中皮腫の原因となることがわかりました。健康被害は数十年という長い潜伏期間のあとに発病します。そのためアスベストは「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。現在では、全てのアスベスト含有製品の製造や使用が法律で禁止されています。
図1:偏光顕微鏡によるアスベスト分析(JIS A 1481-1)
使用用途
用途が3000種以上あると言われるアスベストですが、使用量の9割以上が建材の原料として使用されてきました。主に耐火被覆、吸音、断熱用にアスベストの吹き付け施工がされたり、保温材やシーリング材、スレート屋根にアスベストが含有されたりしました。
吹き付け材の代表的な使用場所は、ビルの機械室、ボイラー室、地下駐車場、立体駐車場、外壁、学校、体育館、工場等の天井裏などです。
図2:アスベスト含有建材採取
健康への影響
アスベストは、アスベストそのものに毒性があるわけではありません。
極めて細いアスベストの繊維は大気中に飛散しやすい性質を持ち、人が吸い込んでしまうと繊維が肺の中に残り、この繊維が長期間に渡り蓄積されることで健康被害を引き起こす恐れがあります。アスベスト工場で働いていた人やその周辺住民、アスベスト含有建材を用いた建物の解体作業に従事していた人などが多く健康被害にあっています。アスベストばく露による主な健康被害は以下の通りです。
石綿(アスベスト)肺
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられますが、石綿のばく露によっておきた肺線維症を特に石綿肺と呼んで区別しています。職業上アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるといわれており、 潜伏期間は15~20年といわれております。アスベストばく露をやめたあとでも進行することもあります。
肺がん
石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが、 肺細胞に取り込まれた石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。 また、喫煙と深い関係にあることも知られています。アスベストばく露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間があり、 ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。 治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。
悪性中皮腫
肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方の ほうが悪性中皮腫になりやすいことが知られています。潜伏期間は20~50年といわれています。治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。
法律
かつて大量に使用されたアスベストですが、健康被害がわかったことで様々な法律によって規制されてきました。規制は時間をかけて強化されています。以下、法律に関する主な歴史をご紹介します。
1971年 特定化学物質等障害予防規則の制定
1971年に制定された特定化学物質等障害予防規則によって、日本で初めてアスベストが規制されました。この法律では、アスベストががん等の慢性・遅発性障害を引き起こす物質であると認められ、製造工場に対する局所排気装置の設置、作業環境測定の実施などが義務付けられました。しかし、使用を規制するような内容ではありませんでした。
1975年 特定化学物質等障害予防規則の改正
日本で初めてアスベストの使用が規制されたのは、1975年の特定化学物質等障害予防規則改正です。アスベスト含有率が重量の5%を超える吹き付け作業が原則禁止になりました。
1995年 労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則、特定化学物質等障害予防規則の改正
1995年の労働安全衛生法施工令の改正では、アスベストの一種で、主に吹き付け材として使用されてきたクロシドライト(青石綿)およびアモサイト(茶石綿)の製造、輸入、譲渡、提供、使用が全面的に禁止されました。労働安全衛生規則の改正では、吹き付けアスベストの除去作業を行う際、事前に計画の届け出をすることが義務化されました。特定化学物質等障害予防規則の改正では、アスベスト含有率が重量の1%を超える吹き付け作業も禁止となりました。
2005年 石綿障害予防規則の制定
石綿障害予防規則は、労働安全衛生法に基づいて特定化学物質等障害予防規則からアスベスト関連のものを分けた、アスベスト単独の規則として制定されました。
2006年 労働安全衛生法施行令の改正
2006年の労働安全衛生法施行令改正では、アスベスト含有率が重量の0.1%を超えるアスベスト製品の製造・輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。実質的に全てのアスベスト含有建材が使用できなくなりました。
法改正
アスベストは長い時間をかけて規制が強化されてきましたが、直近では2020年に石綿障害予防規則と大気汚染防止法の法改正があり、2021年4月から施行されています(一部内容を除く)。
この改正では、規制対象建材の拡大、アスベストの事前調査の義務化、事前調査結果の掲示、保存、備え付けの義務化などが追加されました。
土木管理総合試験所では、2021年5月にアスベスト対策の規制強化、義務化に関する法改正のオンラインセミナーを開催しました。セミナーはアーカイブ配信も行っておりますので、詳しく知りたい方は是非ご覧ください。
セミナー動画をご視聴になりたい方はこちらからご覧ください。
土木管理総合試験所のアスベスト調査・分析について詳しくはこちらをご覧ください。