【非破壊】鋼試験
目次[非表示]
- 1.中性子法による石油タンク底板下の間隙測定
- 2.RT 放射線透過試験
- 3.UT 超音波探傷試験
- 4.PT 浸透探傷試験
- 5.MT 磁粉探傷試験
- 6.鉄筋フレア溶接部のマクロ試験
- 6.1.仕様書・参考文献
- 7.鋼管杭などの非破壊検査
- 8.落橋防止装置 ブラケット溶接部の超音波探傷検査
- 9.アンカー引張試験
- 10.アンカーボルト・ロックボルトの定着長測定
- 11.鋼製防護柵支柱の根入れ長測定
- 12.圧接部試験
- 13.鉄筋引張試験
- 14.鉄筋ガス圧接部・エンクローズ溶接部・機械式継手部検査
中性子法による石油タンク底板下の間隙測定
石油備蓄基地は埋め立て地のため軟弱地盤であることが多く、タンク基礎地盤の沈下が原因でタンク底板に負荷がかかり、溶接部が割れてしまう恐れがあります。最悪の場合にはタンク内の石油が流出する事故につながりかねません。
従来は底板を削孔して底板と基礎の間隙を確認していましたが、限られた検査時間で復旧までを行うためには検査範囲、数量を絞る必要があります。
また、タンクに少なからずダメージを与えることとなります。
このような底板と基礎の間隙を非破壊でかつ迅速に行うために、中性子線を用いた測定を行っております。
RT 放射線透過試験
試験概要
放射線透過試験はX線やγ線の放射線が試験体を透過する現象及び写真フィルムを感光させる現象を利用して、試験体内部の状態を2次元的撮影像としてフィルムに記録させる方法です。
放射線が試験体内を透過する際、内部にきずがあると健全部と比べ、多くの放射線が透過し、X線フィルムをより強く感光させ、写真現像するとそのきず部分は健全部よりも黒く写ります。このフィルムを観察することにより試験体内部のきずを検出することができます。
X線とγ線は同じ種類の放射線で、X線はX線管内で電気的に制御して発生させる電磁波であり、γ線は放射性物質の原子核内部から放射される電磁波でその性質は全く同じです。
X線とγ線との違いは、X線装置は電源を切ればX線は発生せず安全管理面で比較的楽であるが、装置が大型となり狭い場所では使用が困難となりますが、
γ線源は常に放射線を出し続けているため、安全に対する維持管理が厳しいが、装置が小型で狭い場所でも使用が可能であることです。
放射線透過試験は内部きずの検出に適しており、主に圧力容器、船舶、橋梁、パイプライン等の金属構造物の溶接部や鋳造品の検査に広く用いられていますが、近年では食品、木材、文化財、セラミックやコンクリート等の非金属材料に対する内部状況の調査にも頻繁に用いられるようになりました。
この試験ではX線の透過能力に限度があるために、試験体の厚さの上限について制限され、検査可能な厚さの限度は現場撮影に使用する可搬式の装置の場合、鉄鋼材料で約60㎜、コンクリートでは300㎜が限界となります。透過厚さが厚くなる程、装置も大型のものが必要となり装置の配置時間及び照射時間が長くなります。また、透過法であるので試験体をはさんで放射線源とX線フィルムをそれぞれ反対の位置に配置する必要があり、透過厚さが薄くても片側だけにしか近づけない場合、撮影は不可能となります。
溶接部の傷の検出や鉄筋コンクリート内部の鉄筋配置状況を調べることができます。
特性
放射線透過試験の特性としては、次のことがあげられます。
- 試験体内部の状態が2次元的にフィルム上に写されるので、きずの種類、形状、寸法が視覚的にとらえ易い。
- 2次元投影像であるので1枚のフィルムでは厚さ方向の寸法は判別が困難である。
- 試験の結果をフィルムとして永久的に記録することができ、いつでも見直すことができる。
試験体の適用厚さの下限値の制限はなく、どんな薄いものでも撮影可能です。
仕様書・参考文献
JIS-Z 3104 : 1995 鋼溶接継手の放射線透過試験方法
JIS-Z 3106 : 2001 ステンレス鋼溶接継手の放射線透過試験方法
各工事標準仕様書
UT 超音波探傷試験
試験概要
人間の耳で聞こえる音の周波数(20~20000Hz)よりも高い周波数の音波を超音波といい、光と同じように直進性と異なった物体の境目で反射・屈折をする性質があります。
そのためこの超音波を探触子を使って材料中に伝搬させると健全部では直進するが、きずがあるとそこで超音波の一部分が反射され、もとの探触子に戻ってきて受信されます。この現象(山彦の原理)を利用して、きずの存在位置や大きさの程度を知る方法が超音波探傷試験です。
通常鋼材では1~10MHzの周波数の超音波を使用し、試験体の表面から垂直に伝わらせる垂直探傷法と、入射角度を持たせて斜めに伝わらせる斜角探傷法とがあり、試験体の形状や検出したいきずの種類、方向等を考慮して使い分けます。
特性
超音波探傷試験の特性としては、次のことがあげられます。
- 反射法を利用しているので、試験体の片側だけからの検査が可能である。
- きずの厚さ方向の位置を正確に求めることができる。
- 検査可能な厚さの上限が大きい。場合によっては、鋼では3~5mの範囲でも検査可能であり、長さ測定においては10mでも測定可能である。
- 装置が2~6kgと小型、軽量である。
- 検査の結果が直ちに得られる。
- 設備費、消耗品費等がRTと比べると低額である。
- 超音波に対する安全管理はほとんど必要ない。
仕様書・参考文献
JIS-Z 3060:2015 鋼溶接部の超音波探傷試験方法
PT 浸透探傷試験
試験概要
浸透探傷試験は試験体表面に開口している微細なきずの中に液体(浸透液)を浸み込ませ、次にこの浸み込んだ液体を表面に吸い出すと同時に表面に広がらせ、液体の大きなにじみ模様として容器の漏れや溶接部の傷を検出する方法で、液体の毛細管現象とぬれの現象を利用しています。
特徴
浸透探傷試験の特性としては、次のことがあげられます。
- 金属、非金属を問わず探傷することができる。
- 1回の探傷操作で試験品全体を探傷することができ、またきずの方向に関係なくきずが検出できる。
- 特別な装置を必要としない携帯性に富んだものもある。
- 取り扱いが簡単である。
仕様書・参考文献
JIS-Z 2343:2017 非破壊試験-浸透探傷試験
MT 磁粉探傷試験
試験概要
鉄,ニッケル,コバルト及びその合金などのように磁石に強く引き付けられる物質を強磁性体といい,この強磁性体の試験品に磁界を作用させると,試験品は磁化されて内部に磁束を生じます。試験品の表面及び表面直下に磁束を遮るようなきずがあると,その部分で磁束が空間に漏洩して,きずの両側にN,S極の磁極が発生します。この時に試験面に磁粉(鉄製の微粉末)を散布すると,きずの磁極部分に磁粉が吸着され磁粉模様を形成します。きず部に吸着された磁粉模様は,実際のきずの幅にくらべ数倍から数10倍の大きさに拡大されるため,容易にきずの存在を知ることができるようになります。その性質を利用し、磁粉を試験面に散布してきずを検出します。
特性
磁粉探傷試験の特性としては,次のことがあげられます。
- 試験体表面近くに存在する割れのようなきずの検出に最も優れた非破壊試験方法である。
- きずが表面に開口していなくても,表面から2~3㎜程度の深さまでに存在するものであれば、検出が可能である。
- きずが開口していてきずの内部が油や水で満たされていても検出が可能である。
- 試験品表面に塗料やメッキ等の表面処理がされていても0.1㎜程度の塗膜厚さであれば,そのまま検出することが可能である。
- 試験面上でのきずの位置,形状及び大きさはほぼ正確にわかる。
仕様書・参考文献
JIS-Z 2320:2017 非破壊試験-磁粉探傷試験
鉄筋フレア溶接部のマクロ試験
試験概要
この試験の目的は、溶接部断面を目視観察し、断面上のブローホール・割れ・アンダーカット・ピットといった欠陥の有無の確認や、ビード幅・のど厚などの溶接部断面寸法の良否の判定を行うことです。溶接断面を観察するにあたって、鋼のマクロ組織を現出させるため、断面を十分に研磨した後、腐食液を適用します。これによって、溶接部の溶込み具合、溶接欠陥、溶接熱影響部の状態を「肉眼」で確認することが可能になります。主に現場溶接に先立ち、適切な溶接方法、溶接施工技量及び溶接性を確認する目的で行われるため、試験用に作成された「モデル供試体」と呼ばれる試験片が対象となります。
「構造物施工管理要領」(NEXCO)では鉄筋のフレア溶接について下記の試験項目が規定されております。
- 外観・形状寸法試験
- 引張試験
- 断面マクロ試験
当社ではJIS G 0553「鋼のマクロ組織試験」に準じたマクロ試験を実施致します。
仕様書・参考文献
JIS G 0553 「鋼のマクロ組織試験方法」
㈳日本道路協会「道路橋示方書・同解説 Ⅱ鋼橋編」
東・中・西日本高速道路㈱「構造物施工管理要領」
鉄道建設・運輸施設整備支援機構「フレア溶接仕様書」
鋼管杭などの非破壊検査
鋼管杭、コンクリート杭、H鋼杭や鋼管矢板等の既製杭工では、放射線透過試験および浸透探傷試験の実施が規定されております。中堀工法等で放射線透過試験が不可能な場合は、超音波探傷試験を実施致します。
落橋防止装置 ブラケット溶接部の超音波探傷検査
落橋防止装置等の溶け込み溶接部において溶接不良が確認された問題を踏まえ、過去に設置された落橋防止装置の再検査が各自治体等で進んでおります。
また、新規に製作・設置される落橋防止装置については、全数検査の実施や発注者による抜き打ち検査の実施により品質管理の強化が進められております。
既設、新設を問わず、試験方法、判定基準のご提案が可能です。
アンカー引張試験
試験概要
引張試験によりあと施工アンカーが適切に施工されたかを調査します。
一般的には,設計用引張強度に等しい荷重まで引張加力を行い,この荷重に対してアンカーの抜けだし等の過大な変形を起こさず耐えられれば合格とします。
仕様書・参考文献
土木学会:コンクリートのあと施工アンカー工法の設計・施工指針(案)コンクリートライブラリー141,2014
アンカーボルト・ロックボルトの定着長測定
試験概要
橋梁では落橋防止装置という金属の金具をアンカーボルトを用いて固定することが多い。落橋防止装置工の設置に伴うアンカーボルトについては定着長の全数測定が規定されています。このアンカーボルトが十分性能を発揮するためには、設計上の定着長さを満たしている必要があり、その定着長さを測定する方法が、超音波探傷器を用いた超音波パルス反射法によるアンカーボルト長さ測定になります。
また、NATMトンネルのロックボルトについてはNEXCO試験法713にて「ロックボルト工長さ検査試験方法」が規定されており、アンカーボルトと同様に超音波探傷器を用いて長さ確認をします。
仕様書・参考文献
国土交通省「土木工事共通仕様書」
東・中・西日本高速道路㈱「構造物施工管理要領」
鋼製防護柵支柱の根入れ長測定
試験概要
ガードレール、ガードパイプ、転落防止柵等の土中埋め込み式の鋼製防護柵における支柱の根入れ長について測定機器を用いて非破壊により測定します。
当社は、一般社団法人 弾性波診断技術協会に加盟しており、専用の根入れ深さ測定装置NST-2(NETIS登録)を用いて測定いたします。
仕様書・参考文献
非破壊試験による鋼製防護柵の根入れ長測定要領(案)
平成24年6月 国土交通省大臣官房技術調査課
圧接部試験
試験概要
主要な鉄筋継手部の品質を、目視・寸法測定・超音波探傷を用いて評価します。主筋継手部に用いられる接合方法は、ガス圧接、エンクローズ溶接、各種機械式継手の3種類です。
仕様書・参考文献
(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書」
国土交通省「土木工事共通仕様書」「土木工事施工管理基準及び規格値」
東・中・西日本高速道路㈱「コンクリート施工管理要領」
(一社)公共建築協会「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」
鉄道建設・運輸施設整備支援機構「鉄筋の継手工事管理の手引き」
鉄筋引張試験
RC構造物の新設工事、耐震補強工事においては、鉄筋の継手部(フレア溶接、圧接および機械式)が所定の引張耐力を有しているか、引張試験により確認します。
また、年月の経過した既設構造物の健全度調査では、鉄筋の腐食により引張耐力の低下が生じていないか、構造物から鉄筋を切り出し、引張試験により確認する場合もございます。
生材および鉄筋継手試験体は以下の規格に準じて試験を行います。
【試験規格】
JIS Z 2241 金属材料引張試験方法
JIS G 3112 鉄筋コンクリート用棒鋼
【判定基準】
1. 母材の引張強さが規程値を満たすこと。
2. 鉄筋継手試験体(フレア溶接、圧接および機械式継手など)については、破断位置が継手部以外であること。
鉄筋ガス圧接部・エンクローズ溶接部・機械式継手部検査
鉄筋ガス圧接部およびエンクローズ溶接部について、超音波検査により欠陥の有無を検査します。 また、SYゲージを用いて外観検査を行います。
また、近年は機械式継手部の採用が多くなってきており、これらの検査にも対応します。