【環境】土壌調査・分析
土壌腐食環境調査
調査概要
鋼材の腐食の促進に、酸性土壌や土壌中の塩化物イオンが寄与することは広く知られています。しかし土壌に埋設された鋼材に対しては、その他にも比抵抗、Redox電位、硫化物、水分等が腐食に大きく影響します。当社では、これら特殊な調査・分析について対応しております。
事例1
水道施設(埋設配管)
▶ダクタイル錆鉄管/埋戻し土の事前評価および供用中の状況調査[ANSI A21.5-99]
事例2
のり面工
▶テールアルメ工法/盛土材料の適正評価[盛土材料の電気化学的性質に関する試験項目]
▶鋼材に接する土壌の適正評価(中詰土調査)
事例3
基礎工
▶交換杭施工箇所の腐食性評価
調査の背景
インフラの維持管理において問題となっている埋設鉄構造物のうち、水道管については全国の約20%にあたる10万km以上が交換時期を迎えています。交換が必要な管路が年々増加しているのに対し、年間の更新率は伸び悩んでおり、更新には相当な年数を要すると考えられます。
管の中の水は、飲料水として使用可能な水なので、管を劣化させるような物質は多くは含まれておらず、交換時期を過ぎた水道管が直ちに寿命を迎え、水道水の汚染につながるわけではありません。
管の内側はそれほど劣化のスピードは速くなく、長く使える場合もありますが、管の外側は、接触している土壌の性質により、腐食が進みやすい場合もあります。
例えば、鉄を腐食させる、水素イオン濃度(pH)が低い土壌に接触している場合など、接触している土壌の性質によって、水道管の劣化のスピードは全然違うため、土壌の腐食調査が大切になってきます。管の交換において、管の腐食度合いと土壌調査の結果を組み合わせて、腐食の進行を検証することができます。
土壌腐食環境調査・分析及び評価の方法
土壌腐食環境の調査・分析及び評価には以下の2つの方法があります。
1. ANSI規格(アメリカ)
2. DIN規格(ドイツ)
<評価・判定方法>
ANSI |
DIN |
ポリエチレンスリーブ被覆の要否 |
腐食の速度を4段階で判定 |
<ANSIとDINの比較>
調査・分析項目 |
ANSI |
DIN |
細粒分含有量(粒径0.06mm以下) |
〇 |
|
有機炭素含有量 |
○ |
|
酷く汚染された土壌 |
○ |
|
土壌比抵抗 |
○ |
○ |
含水比 |
○ |
○ |
pH |
○ |
○ |
pH4.3までの酸度 |
○ |
|
pH7.0までのアルカリ度 |
○ |
|
硫化物(S2-)含有量 |
○ |
○ |
水抽出による塩化物(Cl-、SO42-) |
○ |
|
硫酸塩(SO42-)含有量 |
○ |
|
地下水に対する構造物の位置 |
○ |
|
Redox電位 |
○ |
<マニュアル、ガイドライン等での試験方法>
・ガス管
供内管腐食対策ガイドライン【令和2年7月改定版 経済産業省 産業保安グループ ガス安全室】
ANSIを用いての全国のガス管の調査が行われていますが、最終的にはANSIもDINも採用されていません。
・ダクタイル鉄管
埋設管路の腐食原因とその防蝕について【日本ダクタイル鉄管協会】
土壌の腐食性判定評価方法としてANSIが掲載されています。
・農業水利施設 鋼管
農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル(鋼管等腐食対策編)【令和2年3月改定版(案) 農林水産省】
調査方法としてANSIが採用されています。(ANSIはDINに比べて調査項目が少ないため採用)
・水道管
水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン【令和元年9月厚生労働省】
周辺土壌調査としてANSIが採用されています。
土壌の養分分析
分析概要
当社では植栽や畑、水田の適切な環境を維持するための土壌や水質、肥料等の各種分析に対応しております。
例)
NEXCO (旧 日本道路公団)植栽基盤用土調査
独立行政法人都市再生機構(UR)植栽基盤用土調査
土壌の析出物分析
蛍光X線分析装置及びX線回折分析装置を用いて土壌及び岩石の分析を行います。
対応している分析
- コンクリートの表面に発生している粉末が何か知りたい。
- 地盤が膨張(隆起)している原因を知りたい(エトリンガイトの有無など)。
- 土壌がスメクタイト(膨潤性粘土鉱物)を含有しているかどうか知りたい。
- コンクリート中の塩分量を知りたい。
- CCA処理木材の定性分析
蛍光X線分析装置 (XRF)
蛍光X線分析装置は、最大300(W)×275(D)×約100(H)mmまでの大型試料を試料室に入れられるため、コンクリート片や岩石片などの主成分分析が可能です。また試料面をカメラ画像で確認しながら分析範囲を最小1mm~最大10mmの範囲で変えられます。
粉末X線回折分析装置 (XRD)
粉末X線回折分析装置を用いて土壌及び岩石等の粉末を分析することにより、試料を構成する鉱物組成が明らかとなります。
土の保水性試験
土が水を蓄える能力は、土壌の土質や粒径などによって異なります。この性質を土の保水性と呼び、植物の生育や地盤への雨水浸透に大きな影響を与えます。
土の保水性を評価する試験を、土の保水性試験と呼びます。
試験の用途
・地盤改良工法の性能比較
・耕地の灌漑量の検討
・雨水の浸透流解析(別途飽和透水係数を測定)
・植栽用客土の性能評価
・造園資材製品の品質管理
・調査、研究に伴う保水性のデータ測定
など
水分特性曲線の作成
土壌中の水分は、土粒子の隙間に生まれる毛細管現象で水が引っ張られることにより保持されています。この、土壌が水を保持しようとする力を「pF」で表します。
土の保水性試験では、土が水で完全に飽和した状態(pF0)から完全に乾燥した状態(pF7)の範囲で、目的に応じてpF値を設定し、低pF値から段階的に水の保持力を求めます。その結果をもとに、pF値に対する土壌の体積含水率をグラフに作図した水分特性曲線(pF-水分曲線)を作成します。
さらに、飽和透水係数を同時に測定することで、その結果を組み合わせて不飽和透水係数の推定式を作成することも可能です。
水分特性曲線
有効水分保持量試験
土の保水性を植栽の観点から考える際、土壌は植物の生育に適している保水性を有しているかが重要となります。植物が有効に利用できる水分は、降雨により土壌が水で満たされた後、重力によって余剰水が排出された状態(圃場容水量:pF=1.8)から、植物の成長が阻害されない限界の水分量(成長阻害水分点:pF3.0)まで、もしくは植物が利用できる限界の水分量(永久萎凋点pF4.2)までとなります。
この、圃場容水量から成長阻害水分点までの範囲を「易効性有効水分量」、圃場容水量から永久萎凋点までの範囲を「全有効水分量」とそれぞれ呼びます(下図参照)。
有効水分保持量試験では、pF1.8とpF3.0(4.2)で体積含水率を測定し、有効水分保持量(L/m3)を求め、土壌が植物の生育に適しているかを評価します。
試験の種類と測定方法
保水性試験では、各pF値に応じた装置を用いて測定を行います。
当社では低pF値から順に、砂柱法、加圧板法、遠心法の3種類の試験装置を使用し、幅広いpF値の測定に対応しております。
試験概要
●試験にかかる期間
pF-水分特性曲線の作成 |
20~30日 |
有効水分保持量試験 |
14~20日 |
※納期はあくまで目安であり、時期・検体数・試験方法により変動いたします。
●試験に必要な土壌量
3~5ℓ(1検体あたり)
●その他
・乱れた土壌を公定法で突き固めたうえ試験を行いますが、現場の土壌を現況密度のまま採取して 試験を行うことも可能です。
・試料を送って頂く際には大きな礫などは避けて採取して下さい。
土壌の沈降試験
土砂沈降試験は、時間経過に伴う濁水のSS濃度変化を測定し、土砂沈降特性を把握する試験です。
開発地域から土壌を採取し、所定の濃度の濁水を調整し、アクリルカラムを用いて時間経過に伴うSS濃度を測定します。開発行為にともなって発生する裸地面への降雨により、土砂が流出し、発生する濁水の予測計算等に必要です。