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【ブログ】熟練技術者に聞く!コンクリートの劣化?配合設計?コンクリートの魅力とは?

現在、コンクリートは社会インフラに必要不可欠な材料となっています。
当社の社会基盤マネジメント部ではコンクリートをより長く安全に使用するため、様々な検査や試験を行っています。

今回はそんな社会基盤マネジメント部の室長でコンクリートのスペシャリスト、星野室長にお話を伺いました。
コンクリートの歴史から配合設計、劣化、そして仕事へのやりがいについて語って頂きました。

社会基盤マネジメント部 星野室長

コンクリートとは?

―まず漠然とした質問になりますが、コンクリートとは何ですか?

星野室長:「コンクリートとは何ですか?」と聞かれたとしたら、一般的には「石灰石から作るものです」というような回答をします。ですが、私はその回答だと50点だと思っているんです。私の思う100点に近い回答は「水を混ぜたら固まる天然の材料に砂と砂利(骨材)を加えたもので、約7000年前からある(諸説あり)ものです」ということ。
なぜかというと、石灰石、あるいは大理石と言った方がいいですね。大理石というのは、基本はセメントと同じだからです。

―そうなんですね?!大理石とコンクリートが同じとは驚きました。

星野室長:はい。大理石を燃やすと石灰(石)になってセメントになります。これはコンクリートの歴史を勉強すると出てくるのですが、中国では紀元前5000年の構造物には、すでにセメント系のものがあったと報告されています。
ローマ時代にも、セメントを石と石の間に入れた構造物がいくつもあります。今でもそういった構造物は残っていて、それが現在のセメントの原型です。(これはローマコンクリートと言って現在でもローマに残るコロッセオ、ローマ水道、ポン・デュ・ガール水道橋等の有名な多くの構造物に使用されています。)

―その頃の構造物が今も残っているなんて、とても高い技術力だったんですね。

星野室長:はい。しかしながら、ローマ帝国の滅亡とともに、実はそこから何百年もコンクリートは姿を消してしまいます。次にコンクリートが出てくるのは、1800年頃になってから。その頃からやっとイギリスでセメントを作るようになりました。そして産業革命が始まり、コンクリートが発達する流れがきました。
日本で言えば、明治6年(1873年)に官営のセメント工場ができました。石灰石が多い国はいくつもありますが、日本は特に多いんです。
石灰石を焼いて作ったのがセメント、そしてそれを固めればコンクリートができますので、ここからセメント・コンクリート産業の発展が進んでいきます。そんな歴史があって、コンクリートは今やインフラを支える材料になっています。

コンクリートの配合設計とは?

―コンクリートには構造物によって要求される性能があると思うのですが、それによって配合設計も変えているのでしょうか?

星野室長:非常に当たり前ですが、良い質問です。
コンクリートは、高層のビルを作る場合、あるいは下にべたで打つ場合、トンネルの場合、各々求められる性能が違います。要求される性能とは構造安全性、使用性、耐久性、そのほか、環境への影響や美観・景観に優れるかなどです。安全性とは、構造体として使用される場合は、荷重や振動に耐える性能を意味し、繰り返し作用を受ける場合は疲労に対する安全性などを意味します。
使用性とは、変形が大きく使用に支障をきたすことのない性能を意味します。

これらを満たすためにコンクリートの配合設計を行いますが、構造設計、耐震設計、耐久設計、景観設計、環境設計などと合わせて考えなければなりません。構造物に要求される性能を確保するためにはまず、配合条件を定めます。

―配合条件とはどのようなものでしょうか?

星野室長:配合条件とは粗骨材の最大寸法、スランプ、空気量、配合強度、水セメント比といったものになります。これらの配合条件を満たすように配合を定めるのが配合計算です。
材料の配合については、暫定的な物になるので、一般的には試し練りを行って所定の配合条件を満たすことを確認しています。そして、実はこの配合設計には安全率が入っています。ですので、本当に必要な荷重より何倍もの強度になっているんです。

当社ではフレッシュコンクリートの納入前に第三者の立場で試験を実施し、その品質を確認する業務やコンクリートに使用する水(練混ぜ水)の品質を確認するための試験、モルタル・グラウト・断面修復材の試験練りを行っています。

コンクリートの劣化とは?

―コンクリートが劣化するということはどういうことでしょうか?

星野室長:コンクリートは生き物のような面があります。呼吸もしているし、時に風邪をひき、病気にもなります。
そんなコンクリートの代表的な劣化に「アルカリシリカ反応」という現象があります。
これは、コンクリート中のある種の骨材(鉱物)がアルカリや水と反応して膨張してしまう現象です。1980年代に広く日本でも生じていることが知られ、「コンクリートのがん」として恐れられました。この現象は原因がコンクリートの中にあるのだから、治すことは難しい。
また、骨材の種類・産地によってアルカリシリカ反応の起こりやすさが左右されることもあるので、アルカリシリカ反応を考えるときは地域性についても考える必要があります。

―ほかにはどのような劣化要因があるのでしょうか?

星野室長:環境によってもコンクリートは劣化します。
特に深刻なのは塩害です。塩害によって、コンクリート中の鋼材がひどく腐食してしまいます。
潮風が来るところだけでなく、融雪剤によっても塩害は進むので、沿岸地域だけの問題ではありません。また、土がコンクリートを痛める原因になることもあります。
例えば、土壌の硫化物が原因の劣化です。コンクリートが浸食され白い結晶が析出します。
この劣化は、一般住宅の基礎コンクリートでも起こります。
何度か診ていますが、マイホームに異常が出るのですから家主の方は大変驚かれます。

―様々な要因で劣化が進んでしまうんですね。

星野室長:ともかく、コンクリートは作られた材料や置かれた条件が悪いと早く傷んでしまいます。そのことが社会に広く知られ始めたのは1980年代で、その時の社会的なショックはとても大きかったのですが、そこからコンクリートは相当良くなってきました。コンクリートはしっかり造りさえすれば、100年以上の耐久性を持つと言ってもいいと思っています。 

業務の中で100年以前に造られたコンクリート構造物を診断することもありますが、緻密に作られたものは強度も高く劣化もなく、驚かされることが多々あります。
当時の人たちが試行錯誤しながら真剣にコンクリートを造ったということが、診てるこちらにも伝わってきます。

異常が生じたということで大正時代初期に造られたコンクリート構造物を診断したときなどは、コンクリートそのものはとてもしっかりしていたんです。どうも異常の本当の原因は地盤の変位なのではないか、という経験もあります。

粗雑に造られたり、置かれた環境が厳しいコンクリートは病気になってしまいます。しかし、入念に造られ、環境からも適切に保護すればコンクリートは半永久的といっても不思議ではないと思っています。

コンクリートの魅力とは?

―星野さんはもともと研究所で働かれていたんですね。

星野室長:そうですね。東大の生産技術研究所です。そこの第5部門にコンクリートの研究室というのがありました。2000年に駒場に移転するまでそこにいました。そこに学生が来て、いろいろな試験体を作ったりするのが私の仕事でした。自分でも研究はしますが、学生指導もしていました。

―コンクリート専門で長く働かれていたと思いますが、辞めないで続けられたのは魅力があったからではないかと思います。いかがでしょうか?

星野室長:私は田舎育ちの人間です。農作業もそうですが、始めたらとことんやるだけです。やってくうちに自分が面白味を見つけていくんです。

―その面白み、コンクリートの魅力はどのような部分ですか?

星野室長:初めはこき使われるだけだから正直面白くはなかったです。ただ自分のためと思ってやっていくと、技術者として自立できるようになり、調査・試験すべきところをしっかり提案し、責任をもって診断できるようになります。そういうところにやりがいと面白味を感じます。

また、面白いというより、コンクリートは私の生活の一部なんです。だからインフラ云々っていうよりも空気と同じような存在だと思っています。それをしっかり学び、生活の糧にできるならそれほどいいことはないと思います。

最後に

コンクリートのことはまだいくらでも喋れます!と仰っていた星野室長ですが、今回はこれにて終了させて頂きました。

「当たり前の事かもしれませんが、新しい知識をどんどん入れるだけじゃなくてそれをどう使いこなすかってことです。だからその度に基本的な学問っていうのはみんな持ってないとね。」と星野さんが仰っていたのが心に残っています。日々勉強、日々精進。ですね。インタビューさせて頂きとても刺激になりました。


改めて、今回インタビューにご協力してくださったのは、社会基盤マネジメント部の星野室長でした。お忙しい中、ありがとうございました!


▼ プロフィール



星野室長(社会基盤マネジメント部)
1967~2013年3月まで東京大学生産技術研究所第5部コンクリート研究室に勤務し、学会などでの多数の論文発表、土木学会吉田賞などの受賞歴あり。その後、2013年4月に土木管理総合試験所に入社。コンクリート主任技士やコンクリート診断士などの資格を持ち、豊富な知識と経験で活躍し続けている熟練技術者です。






当社では新規構造物の品質管理、既設構造物の調査・診断を行っております。
また鋼の非破壊試験も行っておりますので、詳しくは下記リンクからご覧ください

  【非破壊】コンクリート調査 | 株式会社土木管理総合試験所 株式会社土木管理総合試験所


  【非破壊】鋼試験 | 株式会社土木管理総合試験所 株式会社土木管理総合試験所


  【非破壊】鋼コンクリート室内試験 | 株式会社土木管理総合試験所 株式会社土木管理総合試験所





下平 絵里加
下平 絵里加
部署:マーケティング部

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