建築分野や土木分野、目的や用途、仕様などにより鋼(メタル)・コンクリートに求められる要求性能は異なります。
新設の鉄筋コンクリート構造物の場合、硬化後に規定強度が保たれるかなど、材料を対象とした試験が重要です。
また、既設構造物の場合は、非破壊試験でも構造物の診断が可能ですが、試験片を採取し室内試験で詳細に材料等の特性を明らかにします。
当社は、国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた試験所に関する基準(ISO/IEC17025)に適合する試験所として認められ、JNLA登録試験事業者としてマネジメントシステムを運営し、適格な試験ならびに結果を提供しています。
コンクリート構造物を建設する際の材料試験を実施します。
建築物の仕上げや補修材料として使用するモルタル・グラウト材を事前に室内で試験練りを行い、所定の性能を有しているのかを第三者の立場から品質を確認します。
試験項目:
コンクリートに使用する水(練混ぜ水)の品質を確認するための試験を二規格行っております。
試験種類は下記2つございます。
①JIS A 5308付属書C レディーミクストコンクリートの練混ぜ水に用いる水の試験
②コンクリート用練り混ぜ水の品質規格(案)(JSCE-B101-2010)土木学会基準編
また、当社は練混ぜ水の試験において工業標準化法試験事業者に基づく登録試験事業者であり、JIS A 5308付属書C についてはJNLA登録試験を行っております。
レディーミクストコンクリートの練混ぜ に用いる水の試験として以下の5項目を試験します。
アルカリシリカ反応性試験は、適用を予定している骨材でコンクリートを施工した場合にアルカリ骨材反応と呼ぶ現象によってコンクリートに異常を起こすかどうかを調べる試験です。
アルカリシリカ反応とは、コンクリート中のナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属イオンと骨材(砂利や砂) 中の反応性シリカとの反応のことで、コンクリートにおける劣化現象の 1 つです。 この反応が起こると、骨材の表面に生成されたアルカリシリケートゲルが周囲の水を吸収して膨張します。この膨張圧やセメントペーストの圧力変化により、コンクリートのひび割れや変形を引き起こします。
国土交通省では使用する骨材について工事開始前、工事中1回 / 6ヶ月かつ産地が変った場合に信頼できる試験機関で骨材のアルカリシリカ反応性試験を行うことが定められています。
アルカリシリカ反応性試験は、日本産業規格JIS A 1145に基づき評価します。
アルカリシリカ反応性の判定は、溶解シリカ量(Sc)とアルカリ濃度減少量(Rc)の相関から判定します。
骨材のアルカリシリカ反応性の判定
①溶解シリカ量(Sc)が10mmol/L 以上でアルカリ濃度減少量(Rc)が700mmol/L 未満の範囲では“無害”と判定します。
溶解シリカ量(Sc)がアルカリ濃度減少量(Rc)以上となる場合、その骨材を“無害でない”と判定します。
②溶解シリカ量(Sc)が10mmol/L未満で、アルカリ濃度減少量(Rc)が700mmol/L 未満の場合は“無害”と判定します。
③アルカリ濃度減少量(Rc)が700mmol/L 以上の場合は“判定対象外”とします。
既存コンクリート構造物の補修・補強設計等に必要なデータを提供します。
構造物より採取したコンクリートコアを圧縮破壊させ、圧縮強度を求めます。自動載荷型の圧縮試験機により載荷速度を制御し、試験精度の向上を図っています。
当社は、工業標準化法に基づく試験事業者登録制度(JNLA:登録番号060213JP)により登録されており、規定の試験報告書を提出します。
強アルカリ性の材料であるコンクリートにフェノールフタレイン溶液を噴霧し、構造物表面からの中性化深さを求めます。
コンクリート内に配置された鉄筋に対する腐食性の評価やコンクリート自体の劣化度の指標として用います。
当社は、工業標準化法に基づく試験事業者登録制度(JNLA:登録番号060213JP)により登録されており、規定の試験報告書を提出します。
硬化コンクリート中の塩化物イオン量を調べ、鉄筋腐食性の評価を行います。
コア供試体、ドリル微粉末、はつり片のいずれかをコンクリート構造物から深度ごとに採取します。
採取試料を微粉砕した後、硝酸を用いて煮沸・分解して単位容積質量当たりの塩化物イオン量を求めます。
当社は、工業標準化法に基づく試験事業者登録制度(JNLA:登録番号060213JP)により登録されており、規定の試験報告書を提出します。
コンクリート片・粉体での塩素の定量や不明物の構成元素やその含有量を分析します。
試料中に含まれる結晶性物質のX線回折ピークを測定し、岩石のASR判定や生成物の確認をします。
静弾性係数(ヤング係数)を測定することにより、コンクリート構造物の部材剛性や劣化の程度を調べます。
当社は、工業標準化法に基づく試験事業者登録制度(JNLA:登録番号060213JP)により登録されており、規定の試験報告書を提出します。
コンクリート構造物から採取したコアを一定の条件下で促進養生することで潜在的な膨張量を測定し、今後の劣化進行の度合いを予測する試験です。
促進膨張試験には、アルカリ溶液浸漬法、飽和NaCl溶液浸漬法、JCI-S-011を用います。
促進膨張試験 | 養生条件 | 測定期間 |
アルカリ溶液浸漬法 (カナダ法) |
80℃NaOH溶液 | 4週 |
飽和NaCl溶液浸漬法 (デンマーク法) | 50℃ NaCl溶液 | 13週 |
JCI-S-011 (JCI-DD2) |
40℃ 湿度95%以上 | 26週 |
促進膨張試験方法
カナダ法は骨材試験(モルタルバー法・JIS A 1146など)の試験方法や判定基準に準拠していますが、2016年7月に公益社団法人 日本コンクリート工学会から、カナダ法の試験内容をより明確にした測定方法(案)が示され、「アルカリ溶液浸漬法」と定義されました。
アルカリシリカ反応による膨張性を評価するのが目的とされます。
デンマーク法では、コンクリートの膨張性を評価するために用いられます。
本試験方法は、カナダ法と同様に2016年7月に公益社団法人 日本コンクリート工学会(JCI)により策定されています。
JCI-S-011は、1986年に設立された「耐久性診断研究委員会」の調査研究の成果として策定され、日本で唯一のコンクリートの残存膨張量試験法として規定されています。
この試験法は、コンクリートの残存膨張性を評価するために使用されます。
カナダ法 | デンマーク法( アルカリ溶液浸漬法) | |
アルカリ溶液浸漬法 | 直径 50mm 長さ 150mm以上 |
直径 50mm 長さ 約130mm |
基長測定 | 温度80℃の温水中で24時間保存後に測定 | コアをポリエチレンシートで覆い、温度80℃の恒温室で2時間保存後に測定 |
養生条件 | 温度80℃の1N-NaOH水溶液 | 温度80℃の1±0.01mol/lのNaOH水溶液(体積は浸漬するコア試料の体積の4.5倍) |
判定基準 | 浸漬開始後2週間の膨張率 | 浸漬開始後4週間の膨張率 |
当社ではカナダ法およびデンマーク法どちらも対応可能となっております。
ASR診断の現状とあるべき姿研究委員会報告書 公社)日本コンクリート工学会、2014.7
用途
走査型電子顕微鏡(SEM)では、試料に電子線を照射して得られた二次電子を画像に変換することで試料表面の状態を観察できます。
さらに、金蒸着などを用いて試料表面の導通を確保するなど条件をそろえた場合には、試料表面の画像を数万倍に拡大してμmオーダーで微小領域を観察することが可能となります。
また、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いれば、試料から得られた特性X線情報から元素の種類や構成比率の情報を得ることができ、元素の分布図(元素マッピング)を作成することも可能です。
構造物に生じている析出物をSEM-EDSで形態観察・定性分析することにより、セメント水和物とエフロレッセンス、アルカリシリカゲルを判別するのに有効な情報を得ることが可能です。このことからSEM-EDSは、アルカリシリカ反応(ASR)を生じていると考えられる構造物の診断に有効です。
また、構造物に生じたひび割れ等の外観観察のみでは判別が難しいアルカリシリカ反応とエトリンガイトの遅延生成(DEF)も、反応生成物をSEM-EDSで観察・分析することによって判別しやすくなると考えられます。
SEMによる二次電子画像
EDSによるスペクトル分析結果
アルカリシリカ反応(ASR:Alkali Silica Reaction)とは、コンクリート中のアルカリ性成分とアルカリに溶解反応を示す骨材中の有害物質の反応であり、高濃度のシリカ(SiO2)がゲル状物質に変化し、ゲルが吸水することで異常膨張やひび割れが発生し、コンクリートの耐久性低下を招く恐れがあります。全国的に発生が確認されているコンクリート劣化原因の代表例となっています。
当社では、各種試験を組み合わせてアルカリシリカ反応を起こす物質を検知し対策を提案します。
アルカリシリカ反応に関連する試験として電子顕微鏡を用いた反応性骨材・鉱物の形態観察・定性分析、促進膨張試験などを行います。
調査項目 | 試験内容 |
促進膨張試験 | ・アルカリ溶液浸漬法(カナダ法) ・飽和NaCl溶液浸漬法(デンマーク法) ・JCI-S-011(JCI-DD2) |
反応性鉱物や生成物の確認試験 |
・走査型電子顕微鏡観察 ・EDSによるスペクトル分析 |
平日 8:30-17:30
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