土が水を蓄える能力は、土壌の土質や粒径などによって異なります。この性質を土の保水性と呼び、植物の生育や地盤への雨水浸透に大きな影響を与えます。
土の保水性を評価する試験を、土の保水性試験と呼びます。試験結果は、以下の用途に活用します。
・地盤改良工法の性能比較
・耕地の灌漑量の検討
・雨水の浸透流解析(別途飽和透水係数を測定)
・植栽用客土の性能評価
・造園資材製品の品質管理
・調査、研究に伴う保水性のデータ測定 など
測定方法
土の保水性試験は土壌中の水がどのくらい強く土に保持されているかを定量的に調べる試験で、水分特性曲線の作成や有効水分保持量を求めることができます。また、保水性試験から求められる体積含水率と飽和透水試験の結果を組み合わせることにより不飽和透水係数を推定することができます。
保水性試験では、各pF値に応じた装置を用いて測定を行います。 当社では低pF値から順に、砂柱法、加圧板法、遠心法の3種類の試験装置を使用し、幅広いpF値の測定に対応しております。
土壌中の水分は、土粒子の隙間に生まれる毛細管現象で水が引っ張られることにより保持されています。この、土壌が水を保持しようとする力を「pF」で表します。 土の保水性試験では、土が水で完全に飽和した状態(pF0)から完全に乾燥した状態(pF7)の範囲で、目的に応じてpF値を設定し、低pF値から段階的に水の保持力を求めます。その結果をもとに、pF値に対する土壌の体積含水率をグラフに作図した水分特性曲線(pF-水分曲線)を作成します。 さらに、飽和透水係数を同時に測定することで、その結果を組み合わせて不飽和透水係数の推定式を作成することも可能です。
土の保水性を植栽の観点から考える際、土壌は植物の生育に適している保水性を有しているかが重要となります。
植物が有効に利用できる水分は、降雨により土壌が水で満たされた後、重力によって余剰水が排出された状態(圃場容水量:pF=1.8)から、植物の成長が阻害されない限界の水分量(成長阻害水分点:pF3.0)まで、もしくは植物が利用できる限界の水分量(永久萎凋点pF4.2)までとなります。 この圃場容水量から成長阻害水分点までの範囲を「易効性有効水分量」、圃場容水量から永久萎凋点までの範囲を「全有効水分量」とそれぞれ呼びます(右図参照)。
有効水分保持量試験では、pF1.8とpF3.0(4.2)で体積含水率を測定し、有効水分保持量(L/m3)を求め、土壌が植物の生育に適しているかを評価します。
試験に必要な土壌量 | 3~5ℓ(1検体あたり) |
試験にかかる期間 |
pF-水分特性曲線の作成 … 20~30日 ※ 納期は、目安であり、時期・検体数・試験方法により変動いたします。 |
その他 | ・乱れた土壌を公定法で突き固めたうえ試験を行いますが、現場の土壌を現況密度のまま採取して試験を行うことも可能です ・試料を送って頂く際には大きな礫などは避けて採取して下さい |
土壌の三相分布とは、固相(土粒子)・液相(水)・気相(空気)の構成割合を示したものです。
植物にとっては、土壌が以下のように作物の生育、特に根の伸長と密接に関連しています。また、固相率は土壌の硬さと関係し、気相率は通気性や排水性と関係しています。
固相:根系の発達による値物体の支待、ミネラルの供給、養分の保持・供給
液相:水分や養分の供給
気相:植物根系への酸素の供給、雨水の貯留、排水および土壌生物の活動による有機質の無機化等
三相分布は、保水性や透水性の試験が終了した試料を用いて算出することができるため、当社では保水性試験とセットで実施するケースが多くあります。
保水性試験の試料を用いて算出する場合、土粒子の密度試験(ρs)を別途試験により測定する必要があります。
保水性試験の終了した試料を炉乾燥することにより、固相の質量(Ms)が得られます。
土粒子の体積(Vs)、水の体積(Vw)、空気の体積(Va)を以下の式で算出すると、三相分布(体積比率)が求められます。
保水性試験(pF試験)とセットで実施する場合には、pF値ごとに上図のように図化します
試料の湿潤質量:M
試料の体積:V
土粒子の体積 Vs=Ms/ρs
水の体積 Vw=(M-Ms)/ρw(ρw=1.0)
空気 の体積 Va=V-(Vs+Vw)
固相率=(Vs/V)×100 (%)
液相率=(Vw/V)×100 (%)
気相率=100-(Vs+Vw) (%)
一般的には三相分布の理想的な比率は、固相:液相:気相が5:2:3、あるいは5:3:2とされ、固相が45~50%、液相は作物が吸収できる水分で20~30%、気相は20%以上と言われています。
参照
・土壌環境分析法(日本土壌肥料学会監修、土壌環境分析法編集委員会編、博友社)
・健康な土づくり技術マニュアル(農林水産省)
農地の土壌(水田、普通畑、樹園地、施設畑、露地畑)は、経年によって作物の生理障害に繋がる問題が発生します。
作物増収を目的とした肥料過多、土壌改良資材や有機物の多量散布などを続けることで植物体に適したバランスが崩れる原因となります。
無駄のない効率的な施肥を目的とした土壌診断は、収量・品質と環境保全のバランスのとれた土づくりのため、経験と勘だけに頼らない科学的な裏づけに基づく農地運営に必要な分析です。
土壌は、植物体の生育に必要な成分、量を適切に施肥することが重要です。
現在の土壌状態を把握し、適切な改善や維持することで約20~30%の収量増加が見込めると言われています。
養分成分量の分析は土壌診断に欠かせないものとなっています。
土壌診断に用いる養分成分の測定方法には公定法としての定めがないため、当社では「植栽基盤整備技術マニュアル(一般財団法人 日本緑化センター)」に準じて試験や分析を提案しています。
代表的な分析項目としてはpH、EC(電気伝導度)、窒素を実施します。その他、物理的な性質となりますが、粒径組成もよく実施します。
街路樹や緑地帯の樹木の生育状況について、主に土壌成分の観点から調査を行います。植生や樹木の生育が不良な場合や枯死が生じている場合には、土壌の成分分析を行い、原因を調査します。
植生不良や枯死が生じている場合、養分バランスが原因というケースもありますが、適切でない除草剤等の使用による残留農薬が影響しているケースもあります。土壌に残留している除草剤の分析については基準値や公的な試験法はありません。「残留農薬分析」とは一般的に食品中の残留分析を示すことが多く、土壌分析にはノウハウが必要なことから分析できる機関は限られてきます。弊社は分析機関の中でも土壌分析に強いことから、調査計画~土壌サンプリング~結果の評価考察までの対応が可能です。
除草剤等の残留農薬の影響が考えられる場合、国内登録されている除草剤成分は数百成分あり、有効成分が不明なため、調査計画の段階では多成分同時分析を提案しています。特に街路樹の場合にはホームセンターやネット通販で市販されている非農耕地用除草剤として多く使用されているグリホサート※などの成分に着目して分析成分や項目を提案しています。
※除草剤成分に問題があるという意味ではございません。使用方法等が適切でない可能性を意味しています。
一般的に土壌汚染調査では「5地点混合採取」を行いますが、除草剤等の残留農薬については特に規定がありません。試料の採取場所は、街路樹帯や植生帯の規模、植生の生育状況などから評価考察を最も効率的に行える位置や数量をご提案します。除草剤等の残留農薬の分解性や滞留性を考慮してサンプリング位置を計画しますので、サンプリング位置を絞るだけでも知識や経験が求められます。
土壌の分析は食品などの分析とは異なり、分析に影響を及ぼす様々な阻害物質が含まれています。そのため分析にも高度なノウハウが求められます。土壌分析と農薬分析の双方に対応している分析機関は少なく、弊社はこれまでの経験やノウハウを駆使して土壌の分析および評価考察を行います。
・農業関連事業者(農業協同組合、農業経営者、農業ベンチャー、商社、農業コンサル など)
・道路・河川管理者(植栽管理用地の管理 など)
一言で「土」といっても植栽に適する土の性質と盛土や埋戻しに適する土の性質は全く異なります。現場で使用する土がどのような目的で使用するのかにより、確認が必要な試験項目、分析項目も全く異なりますので、是非ご相談ください。
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