ダムの漏水の水質調査

ダムの漏水の起源、漏水対策を講じるための基礎資料をダムの漏水等の分析・解析により提供します。

ダムの漏水の水質調査とは

建設から30年以上が経過したダムが増加する中、ダムの長寿命化を図るため、予防保全型の維持管理が採用されています。ダム管理者による点検に加え、管理者以外が実施する定期検査も、長寿命化に欠かせない取り組みとなっています。
定期検査の委託業務において、異常な漏水やその起源、漏水による堆積物の定性分析などに関する調査でお困りの案件については、これらの分析を通じて漏水に関する基礎資料をご提供いたします。


ダムの漏水の水質調査を行うメリット

ダムの漏水に関する水質分析・解析や、漏水によって生じた堆積物の定性分析を行うことで、ダムの維持管理計画の策定に活用可能な以下の情報をご提供いたします。

  • 漏水の水質分析・解析により得られる漏水の経路、起源に係る情報
  • 漏水による堆積物の定性分析により得られる堤体の損傷に係る情報

1.試験概要

試験の概要

まずはお客様にて、調査対象および検体の採取場所を選定していただきます。選定は以下に留意して行います。

  • 調査対象の選定例
    ・異常な漏水箇所
    ・異常漏水によって生じた堆積物 等
  • 検体の採取場所の選定例
    ・異常な漏水箇所
    異常な漏水箇所の比較対象として
    ・貯水池水
    ・堤体周辺湧水・地下水
    ・堤体監査廊内の正常な漏水箇所 等

分析項目については、当社からご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。
また、検体はお客様による持ち込みにも対応しておりますが、当社にて採取することも可能です。

採取した検体に対して、ダムの漏水の水質分析・解析および漏水箇所の堆積物の定性分析を実施することにより、ダムの漏水についての基礎資料をご提供します。


漏水の水質分析

複数箇所の監査廊内の漏水、ダム貯水池水、周辺斜面の湧水等を対象に水質分析および比較を行い、漏水の水質特性に関する情報を確認します。
水質分析の比較に用いる代表的な分析項目は表1の通りになります。


表1:代表的な水質分析項目
 水素イオン濃度(pH)  RpH  電気伝導率(EC)
 溶存酸素(DO)  ナトリウムイオン(Na+  カリウムイオン(K+
 カルシウムイオン(Ca2+  マグネシウムイオン(Mg2+  塩化物イオン(Cl-
 重炭酸イオン(HCO3-)

 硫酸イオン(SO42-)

 硝酸イオン(NO3-
 亜硝酸イオン(NO2-  溶解性シリカ(S-SiO2  マンガン(Mn)
 鉄(Fe)    

 

水質比較にはヘキサダイアグラム、トリリニアダイアグラムという2種のダイアグラムを用います。ダイアグラムの作成により視覚的に水質比較ができます。
ダイアグラムの作成には、環境水の主要成分であるナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、塩素(Cl-)、硫酸(SO42-)、硝酸(NO3-)、重炭酸(HCO3-)の8つのイオンを用います。

ヘキサダイアグラム

ヘキサダイアグラムとは、主要な溶存イオンの濃度を六角形で表す方法です。
作成した複数の水質試料のヘキサダイアグラムを比較し、六角形の形状の類似性を比較します。形状が似ている水質試料は水質が似ていると考えられます。

図1:ヘキサダイアグラム
※画像をクリックすると拡大します

トリリニアダイアグラム

トリリニアダイアグラムとは、水質組成を2つの三角図と1つのひし形図で表す方法です。
ヘキサダイアグラムと比較して溶存イオンの個別の濃度情報は失われますが、多くの水質試料を1つのダイアグラムで比較できるというメリットがあります。
複数の水質試料をトリリニアダイアグラムにプロットし、ひし形部分(キーダイアグラム)に注目します。プロット同士の距離が近いほど、溶存イオンの相対的な水質組織が似ていると判断します。
例えば、同じ地層を流れる地下水は移動距離が長くなるほど溶存イオンの濃度は高くなりますが、相対的な水質組成は類似する現象がよく見られます。
このようなとき、トリリニアダイアグラムでは比較的近くにプロットされます。

図2:トリリニアダイアグラム
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また、キーダイアグラムがプロットされた位置により、きわめて大まかな分類でありますが、図3および表2のように化学成分を考慮して水質を5つの区分に分類することができます。

図3:トリリニアダイアグラムの領域による区分
※画像をクリックすると拡大します

表2:トリリニアダイアグラムによる水質分類
領域 組成による分類 水の種類
 Ⅰ 非重炭酸カルシウム型
CaSO4又はCaCl2
CaCl2又はCaSO4型の水質組成には、温泉水・鉱泉水や化石塩水などが含まれる。一般の河川水や地下水では特殊なものであり、温泉水や工業排水などの混入が考えられる。
 Ⅱ 重炭酸カルシウム型
Ca(HCO3)2
 Ca(HCO3)2Mg(HCO3)2型の水質組成で、わが国の循環性地下水の大半がこの型に属する。石灰岩地域の地下水は典型的にこの型を示す。
 Ⅲ 重炭酸ナトリウム型
NaHCO3
 NaHCO3型の水質組成で、停滞的な環境にある地下水がこの型に属する。したがって、地表から比較的深い地下水の型といえる。
 Ⅳ 非重炭酸ナトリウム型
Na2SO4又はNaCl型
Na2SO4又はNaCl型の水質組成で、海水および海水が混入した地下水・温泉水等がこの型に属する。
 Ⅴ  中間型 I~IVの中間的な型で、河川水・伏流水および循環性地下水の多くがこの型に属する。

堆積物分析

堆積物に対して、鉄バクテリアの顕微鏡観察、蛍光X線分析、粉末X線回折の3種類の分析を行います。これにより、鉄バクテリアの有無、堆積物中の主要成分、含まれる鉱物の同定結果を提供します。
主要成分と鉱物の同定から、堆積物にコンクリートや地盤由来の成分が含まれているかを推測できます。通常は、複数の漏水箇所から採取した堆積物の分析結果を比較します。

鉄バクテリアの顕微鏡観察

鉄バクテリアは漏水場所の堆積物に高頻度で現れ、高頻度で主成分になります。
鉄バクテリアは水溶性の二価の鉄イオンや二価のマンガンイオンを酸化するバクテリアです。
鉄バクテリアは図4のような糸状の形態を示します。

図4:鉄バクテリアの顕微鏡写真

蛍光X線分析

蛍光X線分析により堆積物の半定量分析を行い、堆積物の主要成分を提供します。

図5:蛍光X線分析チャート

粉末X線回折

粉末X線回折により鉱物の同定を行います。

図6:粉末X線回折チャート

調査結果

異常漏水と比較対象の採取地点から得た水質検体を比較し、両者の類似性に関する調査結果をご提供します。この類似性の分析は、異常漏水の経路や起源の推定に役立ちます。
さらに、異常漏水による堆積物と比較対象の採取地点から得た堆積物を分析し、コンクリート由来成分や地盤成分の有無を調査します。
この調査結果は、異常漏水による堤体損傷の可能性を検討するための重要な情報となります。

これらの結果は、定期点検結果に加えて検討することで、維持管理計画に携わる事業者様の予防保全型の維持管理計画に活用できます。



2.当社が支援できること

当社では、異常漏水、堆積物の分析・解析以外にも、コンクリート構造物の維持管理における点検・調査・診断を実施しています。

  • 採取コアによる圧縮強度試験(コア採取)
  • 非破壊による圧縮強度推定試験(反発度法)
  • 鉄筋探査による配筋確認
  • フェノールフタレイン噴霧法(ドリル法)
  • 基礎排水孔の孔内カメラ調査
  • ドローンによる目視 等

北海道から沖縄までの全国ネットワークで対応していますので、コンクリート構造物の維持管理における点検・調査・診断等のお困りごとについて、お気軽にご相談ください。













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