catch-img

【ブログ】インタビュー|砂防ソイルセメント「土砂の利用可否判定方法」の特許を取得しました!

世界的に見ても土砂災害が多い日本では、砂防事業が不可欠です。
砂防事業では、砂防工事の現場発生土砂を使用する砂防ソイルセメント工法が普及しています。
土木管理総合試験所では砂防ソイルセメント工法について、「土砂の利用可否判定方法」の特許を取得しました。
今回は、この判定方法の特許出願者である八木澤取締役にインタビューを行いました。

砂防ソイルセメントについて

―10月に砂防ソイルセメント工法の「土砂の利用可否判定方法」について特許を取得されましたが、そもそも砂防ソイルセメントとはどのようなものでしょうか?

八木澤取締役:現場の土と水とセメントの3つを混ぜて固めたものをソイルセメントと言います。地産地消のような、現場にあるものを使ってどうにかしようという発想はとてもエコですし、今の時代にも合っていると思います。現場にあるものを使って構造物を作るという流れは今後もっと普及していくのではないかと思っています。

特許「土砂の利用可否判定方法」について

―ありがとうございます。では、今回特許を取得した「土砂の利用可否判定方法」はどのような技術でしょうか?

八木澤取締役:土と水とセメントの3つを混ぜて固める際に、土に様々な有害物質が入っていたり、土が柔らかかったりすると土が硬化しないということが起こります。現在、硬化するかしないかの判定というのは、実際に3つを混ぜて固めてみないとわからないのが実態です。つまり試してみないとわからないということです。今回特許化した判定方法というのは、微生物量に注目することで、実際に混ぜなくても判定できるという技術です。

指標「微生物量」について

―この判定方法で微生物に注目することになったのはなぜでしょうか?

八木澤取締役:土の中の有害物質には様々ありますが、一般的に言われているのが腐植酸と言われる物質です。一般的には、腐植酸の1種であるフミン酸という物質が悪影響を与えていると言われていたので、はじめはフミン酸に注目していました。しかし研究を進める中でフミン酸があっても固まる土が出てきたので、不良要因はフミン酸ではないと考えました。

―はじめから微生物に注目していたわけではないんですね。

八木澤取締役:はい。フミン酸でないとしたら何が原因かと考えた時に出てきたのが微生物です。土の中に緑色の葉が入っていても固まるんですが、腐っている途中の葉が入っていると固まらないんです。そこで土や水が腐る過程に原因があると発想しました。過程に何があるか考えた時に微生物が分解しているのでそれが影響しているのではないかと思ったということです。

―微生物と土の硬化にはどのような関係があったのでしょうか?微生物量によるのでしょうか?

八木澤取締役:微生物に注目して研究を進めたところ、微生物量が多いほど土が固まりにくいということがわかりました。微生物の量の推定は当社では出来ないので、大学機関に依頼して測定して頂いています。ただ、社内にも学生時代に微生物の研究をしていた社員が多いので、今後微生物量の推定は社内で出来るようにしたいと思っています。

―では従来の判定方法との違いで言うと、実際に混ぜなくても良いという点で負担が少なくなるということですね。

八木澤取締役:そうです。実際に混ぜるとなると結果が出るまで大体1か月半ぐらいかかってしまいます。さらに金額的にも1度評価するだけで100万円以上かかってしまいます。そうすると工事をしている方々にとっては時間もお金もすごくかかり、かなりのロスになってしまいます。今回特許化した微生物量を指標とする方法が実用化されれば、時間もコストも半分以下になる効果もあると思います。

研究について

―この研究を始めたのはいつ頃ですか?

八木澤取締役:5年ほど前なので、2016年頃に基礎研究を始めました。

―研究を始めたきっかけを教えてください。

八木澤取締役:当社はソイルセメントの配合試験を多くご依頼いただいていますが、固まるはずだったのに固まらない、反対に固まらないはずだったのに固まったというような結果が出ることがあります。そのトラブルを未然に防がなければいけないと考えたのがきっかけです。

―研究の中で苦労した点はどのような点ですか?

八木澤取締役:試験体となるサンプルの土を準備するのに苦労しました。フミン酸など腐植酸は市販でも売っているのでそれを添加すれば土を作れますが、その中に微生物を入れるというのができません。なのでサンプルに適した土を北海道から九州まで探しに行っていました。

―現地まで土を取りに行っていらっしゃったということですか?

八木澤取締役:そうです。真冬の北海道の釧路に-20℃の中、土を取りに行ったこともありました。土が凍ってしまっていたので、氷を割って下から土を取り出してもらいました。

―地域によって微生物が違うのでしょうか?

八木澤取締役:入っている微生物の量が違います。1グラム中何億という微生物がいますが、その量は地域によっても場所によっても違うので、試験に適した微生物量がいる土を探し当てるのは大変でした。

今後の展望について

―こちらの技術ですが、すでに実用化はされているのでしょうか?

八木澤取締役:まだサンプル数が足りないので、数値化して分析出来るまでにはもう少し研究が必要かと思っています。基礎研究は終わったので次は実験でサンプル数を大量に増やしていくというところです。

―ありがとうございます。今後も研究を続けていかれるということですが、今後の展望を教えてください。

八木澤取締役: 個人的には、ソイルセメントという分野はこれからも伸びる工法だと思っています。日本では毎年様々な災害が起こっていますが、ソイルセメントを使っておけば防げた災害もあったのではないかと感じています。そういったときにできる限り早く適性を判定できる方法が世の中には必要だと思います。当社もそこに先駆けてソイルセメントを発展させていきたいというのが展望でしょうか。まあ私があまり年を取らないようにしないとそのうち体がもたなくなるので、死ぬまでには完成させたいと思います(笑)

―お忙しい中、ありがとうございました!

​​​​​​​

今回インタビューにご協力してくださったのは、技術第二部門の八木澤取締役でした。

土木管理総合試験所では、砂防ソイルセメントの配合設計・品質管理に対応しております。
詳しくはこちらをご覧ください。

  【土質調査】土質試験 株式会社土木管理総合試験所



光本 榛名
光本 榛名
部署:マーケティング部

人気記事ランキング


セミナー情報


調査実績


24時間365日WEBで依頼

協力業者を見つける


採用情報