【ブログ】熟練技術者に聞く!建物の長寿命化を実現する「マンションの劣化診断」とは?
日本のインフラは高度経済成長期に集中的に整備された背景があり、道路、橋梁、トンネル等の土木構造物だけでなく、マンション、学校、病院等の建築構造物についても急速に進む老朽化が深刻な問題となっています。
当社 社会基盤マネジメント部 建築課では、特に建物の維持管理・長寿命化に対する調査・点検に取り組んでいます。
今回の記事では、一級建築士の資格を持ち、卓越した専門性で建築課を牽引している神農さんにインタビューを行い、建物に対する調査・点検の傾向や当社が対応できることについて語っていただきました。
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建物に対する調査の傾向
―現在、既存建物に対する調査はどのような傾向でしょうか?
神農:既存建物に対する代表的な調査として耐震診断が挙げられます。公共の建物では、耐震診断はほぼ完了し、維持管理・長寿命化に関する調査が始まっている状況です。民間の建物では、耐震診断は公共の建物に比べると遅れており、引き続き進めていく必要があります。また、耐震診断以外の今後の傾向としては、特に「マンションの劣化診断」が増えていくと予測しています。
―神農さんがマンションに注目されているのはなぜでしょうか?
神農:鉄筋コンクリート造マンションの寿命は一般的におよそ60年と言われていますが、すでに築40年以上のマンションが多く存在しています。国土交通省でもマンションの長寿命化を促進していることから、今後さらにマンションの劣化診断の必要性が高まっていくと考えています。
マンションの劣化診断とは
―マンションの劣化診断はどのような目的で実施されますか?
神農:マンションの劣化診断は、建物や設備の劣化状況を正確に把握するために実施されます。得られた診断結果をもとに修繕計画の見直しや建て替えの検討をするので、建物をより長く安全に使用するために重要な役割を果たしています。
―タイミングとしては修繕計画の見直し時に実施されるということでしょうか?
神農:そうですね。多くのマンションでは長期修繕計画が策定されているので、その見直しが必要となった際に劣化診断を実施するのが一般的です。調査をしなければ修繕の必要性や内容の判断ができません。そのため、調査をして設計・施工に必要な基礎データを得る必要があります。
―調査ではどのような変状を確認するのでしょうか?
神農:コンクリートのひび割れ、外壁やタイルの剥離、鉄筋の露出、配管の錆び、雨漏りの発生などが挙げられます。特にコンクリートの中性化により中の鉄筋が劣化するといったような、躯体・骨組みに関わるものは緊急性が高くなります。
▲ コンクリートの中性化試験の様子
当社が対応できること
―変状を確認するために、当社ではどのような調査項目に対応していますか?
神農:建物の様々な部分に対する調査に対応しています。例えば、目視打音調査、中性化試験、外壁の塗膜やタイルの引張試験、シーリング材のひも状接着性試験、内視鏡調査、アンケート調査などが挙げられます。他にも多くの調査を取り扱っておりますので、具体的には事前のお打合せで決定させていただきます。
―調査結果はどのように活用されますか?
神農:調査した結果をもとに劣化判定を行い、修繕の必要性を判断します。当社にはコンクリートの専門家が多く在籍しているため、建物があとどのぐらい持つかの算出も可能です。また、劣化が確認された箇所については、具体的な修繕内容のご提案まで行っています。依頼があれば、その後の工事の計画・設計・管理まで一貫しての対応も可能です。
―調査から工事の管理まで一貫して対応可能なんですね。最後に、そのほかにも当社の劣化診断サービスの強みがあれば教えてください。
神農:はい、非破壊試験以外にも様々な分野の試験に対応できることが当社の強みのうちのひとつです。修繕工事の際のアスベスト調査や工事後の室内空気環境調査などについても幅広く対応いたします。お困りのことがあれば是非ご相談いただければと思います。
―改めて、今回インタビューにお答えいただいたのは当社 社会基盤マネジメント部 建築課の神農さんでした。インタビューを通して、建物劣化診断が必要とされる背景および対応方法について理解を深めることができました。ありがとうございました。
▲ 目視打音調査の様子
▼ プロフィール
神農 清一(社会基盤マネジメント部 建築課)
設計事務所に入社後、様々な建築設計のプロジェクトで活躍し、一級建築士の資格を取得。約10年間の実務経験を経て独立し、設計事務所を設立する。その後、2008年に土木管理総合試験所に入社。建築に関する豊富な知識と現場経験を活かし、建物の調査・点検業務を行う熟練技術者です。
参考事例
マンションの劣化診断について、当社の事例をご紹介します。
構造種別 |
壁式鉄筋コンクリート造 |
方法 |
コンクリートの中性化試験、外壁塗膜付着力測定試験、外壁目地シーリング材簡易引張試験、内視鏡調査、抜管試験 |
結果 |
・構造的な劣化・欠損は確認されなかったが、部分的な補修(外装・防水・腐食箇所の補修)が必要 |
構造種別 |
鉄筋コンクリート造 |
方法 |
コンクリートの中性化試験、外壁塗膜引張試験、外壁目地シーリング材簡易引張試験、内視鏡調査、抜管試験、アンケート調査 |
結果 |
・床や壁タイルの多くの部分で浮きが発生しており、剥離防止処置が必要 |
当社では、建物劣化診断のための様々な試験・調査を承っております。
最適な方法で解決策をご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。