土木・建築に限らずコンクリート構造物では、疲労、中性化、塩害、凍害、アルカリシリカ反応(ASR)、化学的侵食(硫酸塩劣化)など、様々な要因によって劣化が引き起こされます。
その中でも、寒冷地で見られるコンクリートの劣化現象として「凍害」が挙げられます。
凍害とは「コンクリート中の水分が長年にわたり凍結と融解を繰り返す中で、コンクリートが徐々に劣化する現象」を指しますが、一冬で症状が現れる場合もあります。
凍害による劣化が進行すると、コンクリート表面に特徴的な外観変状が発生し、構造物に求められる安全性や使用性、美観などの性能が低下します。
また、コンクリートに発生している変状は凍害に関連する「複合劣化」に起因している場合がほとんどです。
当社では、凍害や凍害に関連する複合劣化に対して適切な調査を提案し、劣化要因や程度の判定から必要に応じた補修設計・施工まで対応します。
凍害はコンクリート組織のゆるみであり、その範囲は強度と同じで視認できない範囲にまで至っています。調査では劣化深さや範囲を特定することで、秩序だった補修方針を定められると共に、補修工法の選定や数量算出に資することができます。
まずは外観調査でコンクリート構造物に凍害による変状が発生しているかどうかを確認します。
凍害による変状が確認された場合は、詳細調査により凍害の深さや影響度を評価します。
詳細調査は、最初から破壊試験を行うのではなく、先に非破壊試験を行うことを基本としています。
最後に、得られた結果から劣化原因を特定し、適切な補修・補強対策を講じます。
凍害を受けた構造物では、コンクリート表面に特徴的な外観変状が発生することが一般的です。
外観調査では、下記いずれかの変状が確認できた場合に「凍害の可能性がある」と判断します。
外観変状 | 解説 |
スケーリング | コンクリート表面のモルタル部分がフレーク状に剥離・剥落する現象。 |
微細ひび割れ | Dひび割れ、地図状ひび割れ、長手方向ひび割れ、斜めひび割れといった特徴的な形状で発生。エフロレッセンスが表面に析出することもある。 |
ポップアウト | 骨材粒子の膨張による破壊で、コンクリート表面部分がクレーター状に剥離する現象。 |
剥離、断面欠損、鉄筋露出 | スケーリング、微細ひび割れ、ポップアウトの進行により発生。また、凍害に限らず、他の劣化要因に起因する場合も多い。 |
その他凍結膨張による変状 |
「凍害の可能性がある」と判断された構造物に対しては、詳細調査を実施し、凍害の深さや影響度を評価します。調査をする際は、非破壊試験により破壊試験が必要かどうかを判断することで、構造物の損傷リスク低減や調査コスト縮減が期待されます。
調査項目 | 損傷有無 | 劣化深さ | 耐凍害性 | |
非破壊試験 | 超音波表面走査法 | ○ | ||
超音波トモグラフィー法 | ○ | |||
破壊試験 | 超音波伝播速度測定 | ○ | ||
静弾性係数測定 | ○ | |||
気泡間隔係数試験 | ○ | |||
蛍光エポキシ樹脂含浸法 | ○ |
コンクリート表面に超音波の発信子と受信子を当て伝播速度を測定することで、凍害深さを非破壊で調査する手法です。超音波は劣化部を迂回して受振子に到達しようとする性質があることから、損傷が大きいほど伝播速度は遅くなります。
コンクリート表面を格子状に分割し交点間の超音波伝播速度を測定することで、凍害範囲を非破壊で調査する手法です。損傷が大きいほど伝播速度が遅くなる性質を利用し、伝播速度の変化点から凍害範囲を求めることができます。
超音波の発振子と受振子で採取したコア側面を直径方向に挟み込み、透過した波の伝播時間を深さ方向に測定し、コンクリートの健全性を評価します。
コアが湿潤状態の場合は表面付近の速度低下が顕著になると考えられるため、測定は乾燥状態で実施します。
コンクリートの品質は、対象の構造物に合わせて適切な評価方法をご提案します。
P波伝播速度(km/s) | コンクリートの品質 |
4.60以上 | 優 |
3.70~4.60 | 良 |
3.10~3.70 | やや良 |
2.10~3.10 | 不良 |
2.10以下 | 不可 |
出典:日本コンクリート工学会「コンクリートの非破壊試験法 研究委員会報告書」
コンクリート中にひび割れ等が生じると、圧縮強度に対し静弾性係数が大きく低下することから、コンクリートの静弾性係数を測定することで劣化状況を把握することができます。
供試体の軸に平行かつ対称な二つの線上で、供試体高さの1/2の位置を中心にひずみゲージを取り付ける
供試体を載荷し、ひずみ変化および最大荷重を測定する
静弾性係数を算出し、評価する
コンクリートは、同じ空気量であれば気泡間隔係数(気泡と気泡の間の距離)が小さいほど耐凍害性が向上します。気泡間隔係数試験では、コンクリートの研磨断面上に区切線を引き、その区切線が気泡上を横切る際の弦長の総和から空気量を算出するリニアトラバース法により気泡間隔係数を測定します。
紫外線を当てると光る性質を持つ蛍光染料を添加した超低粘度形エポキシ樹脂をコア試料表面から吸引・含浸させ、その発色を観察することで微細ひび割れを可視化画像として評価する手法です。表面から含浸した蛍光エポキシ樹脂が集中している範囲を劣化部(深さ)として評価します。
詳細調査の結果を経て対策が必要と判定された場合には、劣化要因や劣化レベルに応じて下記工法より適切な補修・補強対策を講じます。
その他 当社しかできない調査アプローチや補修設計法もあります。
凍害調査・対策は寒冷地に本社を置く当社にお任せください。
工法 | 解説 |
表面被覆工 | コンクリート表面に被覆材を塗布することで、表面を保護し凍害の原因となる水分を遮断する工法。当社では主に樹脂塗膜を使用する。予防保全や初期の劣化に対して適用されることが多い。 |
表面含浸工 | コンクリート表面に含浸材を浸透させることで、凍害の原因となる水分を遮断するとともに耐久性などの性能を向上させる工法。当社では主にシラン系の含浸材を使用する。 |
断面修復工 | コンクリート断面の劣化損傷部をはつり除去し、補修・再生する工法。補修後の美観性から、様々な劣化損傷に広く適用される。 |
ひび割れ補修工 | コンクリート構造物に発生したひび割れ内部に樹脂やセメント系材料を注入充填し、空隙を埋める工法。 |
凍害は、塩害・アルカリシリカ反応(ASR)・中性化それぞれと互いに劣化を促進する複合劣化として作用し合うことが知られています。
凍害以外の劣化因子の作用が考えられる場合にも、原因を推定するための適切な調査のご提案が可能です。
また、当社は凍害の危険度が大きいとされる長野県に本社があり、多数の構造物調査の実績があります。
凍害に関する研究実験として各種補修材の耐凍害性の評価も実施しているため、実績と技術的知見の両方を踏まえて、調査から補修工事までを総合的に支援します。
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