【ブログ】現場体験取材7~舗装の構成調査編~
現場体験取材シリーズでは、当社の様々な現場を取材・紹介しています。
第7回となる今回は、社会基盤マネジメント部の「舗装の構成調査」の現場に行ってきました。
現場体験取材シリーズ 過去ブログ は 下記リンクよりご覧ください。 |
調査の目的
日本のインフラは高度経済成長期に集中的に整備されたため、老朽化の問題が同時多発する可能性があります。さらに、日本の財政状況では、これらの問題を全て解決するだけの余裕はありません。
このような背景から、インフラの維持管理や長寿命化施策を進めるために、国土交通省は2014年5月に「インフラ長寿命化計画」を策定し、インフラのライフサイクルを延長するための行動計画をまとめました。
詳細な調査目的は、こちらからご確認いただけます。
構造調査と構成調査
舗装の構造調査は、舗装の物理的構造や強度を評価するために行われます。具体的には、舗装のたわみ量、アスファルト層の状況、路床の状態などを調べ、舗装の耐久性や修繕の必要性を判断するためのデータを収集します。
一方で、構成調査は、設計舗装厚に対し、現在の各層の材質や厚さを調査するものです。アスファルト層、基層、路床の材質や厚さを確認し舗装が適切に機能しているかを評価します。
これらの調査はどちらも舗装の維持管理において重要であり、構造調査は強度や耐久性の評価に、構成調査は材質や層の特性の評価に焦点を置いています。
舗装の構造調査と構成調査の目的と調査対象の比較表
構造調査 |
構成調査 |
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目的 |
舗装の物理的構造や強度の評価 |
舗装を構成する各層の材質や厚さを調査し各層が適切に機能しているか評価 |
調査対象 |
舗装のたわみ量、路床の状態、アスファルト層の状況 |
アスファルト層、基層、路床の材質や厚さ |
調査手法としては、FWD※によるたわみ量調査、コアボーリング、開削調査を行います。
また、詳細な対策工法を検討する際には構成調査を行います。従来は開削調査、コアボーリングを行い舗装構成を把握していましたが、一部の開削調査では路線全体、舗装区分の舗装厚を把握することは難しく課題がありました。
しかし、3次元レーダ搭載車両RSV(Road Scan Vehicle ®) を用いた車載型レーダ探査により、面的に連続測定することが可能になり、アスファルトコンクリート層厚、路盤層厚の確認、舗装構成の変化点の把握が可能になりました。
※FWD(Falling Weight Deflectometer:重錘落下たわみ測定装置)とは、路面に錘を落として衝撃荷重を与え、衝撃で生じる舗装表面のたわみ量を測定する装置です。
※舗装厚とは路床面から路面までの厚さを指します。構造設計でいう舗装厚は摩耗層や遮断層の厚さを除いた舗装全体の厚さを指し、路床土の設計CBRと交通量区分によって決まります。
舗装の構成調査現場レポート
今回は舗装の構成調査の依頼のため、舗装を構成する各層の厚さを調査しました。
当日は物理探査課の技術員と現地で待ち合わせをし、到着後早速準備に取り掛かりました。
当社が保有している、レーダを搭載した車両 Road Scan Vehicle® (ロードスキャンビークル以下、RSV)を使用して調査を行いますが、電磁波レーダアンテナは走行上の支障となるため、普段は車内にレーダを格納しています。
RSVに使用されている車両はアメリカトヨタ社のSequoia(セコイア) ですが、写真で見るよりも実物の方が圧倒的に大きく、非常に驚きました。それもそのはず、格納されているレーダは国内最大のアンテナとなっており幅2.4m、重さ約38kgもあります。取り付けは一人では到底難しいですが、当社の熟練された技術員が阿吽の呼吸でテキパキと行い、あっという間に取り付けが完了しました。
さらにケーブルを接続し、車内の計測用PCを起動させることで計測が可能になります。
▲ 電磁波レーダアンテナ
車内にて計測のための設定と確認を行います。設定が完了したら実際に走行して計測します。
セコイアの車両自体は大きいのですが、計測のための機器等を載せており、乗車できるのが3人までということで、私は皆さんの安全を祈りながら待機しました。
計測の方法としては、白線に沿って車両を走行させ、データを取得していきます。オペレーターはデータ取得毎に、走行データを記録します。走行データはGPSと連動しているため把握できますが、電波の乱れや、データ取得の抜け・漏れを防ぐために記録を行っていくということでした。
当社のRSVに取り付けられているレーダは一カ所につき30MHz~3030MHzの間で周波数を高速で変化させながら調査が出来るので、浅いところは高い周波数で解像度よく、深いところは低い周波数を使って解析を行えます。 また、一回の測定で手押し型レーダ29測線分相当のデータを取得することが可能になり、効率よく面的に把握ができます。
これにより路線全体の舗装構成をレーダで探査し合理的、経済的に補修検討を行うことが可能になりました。
加えて、高速で走行しながら測定できるので交通規制がいらない点もメリットです。
計測が終わり、組み立てたものを解体し、車両に格納して現場の計測自体は終了です。
データの確認と報告書の作成
現場の計測が終了したら終わりではなく、そこからはデータを確認して報告書の提出までが当社の仕事です。
専用ソフトを用いた技術者による解析後、解析データを取りまとめた報告書を作成し、納品となります。
現場体験取材を終えて
今回は物理探査課の皆さんとRSVを利用した舗装の構成調査を行いました。埋設管、空洞調査だけでなく、構成調査をレーダで行うことで道路を効率的、経済的に維持していくことができると知り弊社の仕事は多岐にわたり様々な角度からアプローチが可能だと実感しました。
社会基盤マネジメント部の皆さん、暑くまたタイトなスケジュールの中で丁寧に優しく教えていただきましてありがとうございました。
原 郁生( 社会基盤マネジメント部 )写真右
2016年 土木管理総合試験所に入社後、SIP( 戦略的イノベーション創造プログラム )の研究員として出向。2017年に物理探査部( 現:社会基盤マネジメント部 )に配属以降、RSVを使った橋梁床版内部劣化調査や舗装厚調査、地中レーダ探査機を使った埋設管探査や空洞探査業務を行い、地域を問わず全国の現場で活躍している。
松村 洋孝( 社会基盤マネジメント部 )写真左
2021年土木管理総合試験所に入社、物理探査部( 現:社会基盤マネジメント部 )に配属以降、原と同様RSVを使った橋梁床版内部劣化調査や舗装厚調査、地中レーダ探査機を使った埋設管探査や空洞探査業務を行い、地域を問わず全国の現場で活躍している。