舗装を対象とした長寿命化調査

インフラ長寿命化の必要性

日本のインフラは、高度経済成長期に一斉に整備された経緯があり、老朽化問題も同時期に起こりえる状況です。また、日本の財政はこれを全て賄えるだけの余力が無いのも現状です。国土交通省の推計では、これまでのインフラ維持管理と同様の「 インフラに不具合が生じてから修繕を行う事後保全 」の方法を行う場合と「 インフラに不具合が生じる前に修繕やメンテナンスを行う予防保全 」を実施した場合では、2048年までにかかる維持管理・更新費は、10.9兆円~12.3兆円に対し、5.9兆円~6.5兆円と約47%も抑えることができると見積もられています。

このようなインフラの維持管理/長寿命化施策を実行するため、国土交通省が2014年5月(平成26年5月)に「 インフラ長寿命化計画 」として、インフラのライフサイクルを延長するための各種行動計画を取りまとめました。 その後、2021年6月(令和3年6月)には第2次のインフラ長寿命化計画が策定され、ライフサイクルの延長に留まらず、将来にわたりインフラを維持するための継続的な取り組みについて取りまとめられています。


インフラ長寿命化基本計画とは

「 国民の安全・安心を確保し、中長期的な維持管理・更新等に係るトータルコストの縮減や予算の平準化を図るとともに、維持管理・更新に係る産業(メンテナンス産業)の競争力を確保するための方向性を示すもの 」として、2013年11月に内閣府「 インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議 」によって策定されました。 この結果を受け、国土交通省は「 予防保全 」の考え方を基本として、国や地方公共団体などと連携してインフラのメンテナンスを推進しています。インフラ長寿命化基本計画の狙いとロードマップは以下のとおりです。

【 インフラ長寿命化基本計画の狙い 】

  1. 個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)を核として、メンテナンスサイクルを構築すること
  2. メンテナンスサイクルの実行や体制の構築等によって、トータルコストを縮減・平準化すること

  3. 産学官の連携によって、新技術を開発・メンテナンス産業を育成すること

【 インフラ長寿命化基本計画による目指すべき姿とロードマップ 】

  1. 安全で強靱なインフラシステムの構築
    → 2030年に老朽化に起因する重要インフラの重大事故ゼロ
  2. 総合的・一体的なインフラマネジメントの実現
    → 2020年頃、適切な点検・修繕等により行動計画で対象とした全ての施設の健全性を確保
  3. メンテナンス産業によるインフラビジネスの競争力強化
    → 2030年に点検・補修等のセンサ・ロボット等の世界市場の3割を獲得

舗装の長寿命化に関する全国地方自治体の取り組み

舗装の長寿命化・ライフサイクルコストの削減など効率的な修繕の実施にあたり、道路特性に応じた走行性、快適性の向上に資することを目的に2016年10月(平成28年10月)に国土交通省・道路局により舗装点検要領が通知されました。道路施設の老朽化と同様に道路の表面を形成する舗装においても、今後、効率的に維持管理していくことが求められています。

日本の道路延長は、約1,226,600kmにおよび、そのうち都道府県道/市町村道の割合は、約94.7%に達します。都道府県道/市町村道の道路管理者である一部の地方自治体においては、点検要領の通知を踏まえ「社会資本長寿命化計画舗装ガイドライン」「公共施設等総合管理計画(行動計画)」「公共施設マネジメント計画」「舗装維持管理計画」等のインフラの長寿命化計画を策定し、コストの縮減ならびに予算の平準化を図っています。

これらの計画策定については、舗装の現状把握が必要となりますが、その検討の起源となるものが道路供用時の舗装構成や諸元等が記載された舗装台帳(カルテなどの名称で呼ばれている自治体もあります)などです。しかし、現状では、舗装台帳の整備不足や予算/人員不足等により台帳のメンテナンスを行えていない自治体が多いと思われます。

▲ 舗装の維持管理サイクルのイメージ図

1.当社が舗装の長寿命化でできること

舗装の長寿命化に必要なアウトプット

自治体の舗装維持管理に関する興味関心は「現在の舗装の健全度」や「将来の劣化予測」、また、その時に必要な「補修にかかる予算の予測」であると考えます。

当社では、レーダとLiDARの両方を搭載した車両 Road Scan Vehicle® (ロードスキャンビークル以下、RSV)による舗装調査により、将来の舗装維持管理に関する計画に必要な検討要素を提供します。

【 自治体の維持管理担当職員が知りたい情報の例 】

  1. 現在の管理路線の舗装がどの程度健全なのか
  2. 今すぐ、またはどのくらいの将来にどのような補修が必要となるのか
  3. その際の工事費(予算)はいくらかかるのか
  4. 予防保全の方法はどのような種類があり、処置によりどの程度の延命が可能なのか
  5. 事後保全と予防処置のコスト差(LCCメリット)はどのくらいなのか など
     

路面撮影ユニットによる現況舗装データを収集し「舗装維持管理計画」を策定する手法の提案

限られた予算の中で維持管理メンテナンスを計画効率的に行い、適切に予算執行を図ることは地方自治体の行政職員としての技術が求められますが、情報が何も無い状態では計画も対策も打つ手がありません。

当社では、供用後、数十年経過した現在の道路の状態を、RSVを走行させ、短時間かつ交通規制も不要な舗装調査を実施し把握します。
本調査により、表面のひび割れ・わだち掘れ・縦断凸凹(IRI:International Roughness Index)はもとより、同時に舗装厚の確認も可能であり、舗装厚変化点を把握することで舗装台帳の復元が可能となります。

なお、舗装は表層・基層・上層路盤・下層路盤等で構成されていますが、経年の圧密にて多層か単層状態となっていることがほとんどです。
しかし、当社の舗装調査で得られたデータから現況把握と同時に舗装工区の推計は可能です。ここで算定された工区と現状の破損状態を用いて、精度の高い補修計画を立案することが可能です。

▲  Road Scan Vehicle® (ロードスキャンビークル)

2.取得データを自動診断・自動出力

▲ AI診断のイメージ図
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① 機械学習による診断範囲の特定

路面撮影ユニットにより可視画像・高さ画像のデータからひび割れ診断に用いる範囲をAIによって決定させます。
道路標示を識別するAIで白線を抽出し、白線の間を診断範囲とします。

② 機械学習によるひび割れ診断

路面ひび割れをAIで診断させます。左記AI診断図のカラーパターンでは、青:ひび割れなし、黄:線ひび割れ、赤:面ひび割れ としています。


▲  各報告書様式のイメージ

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③ 各報告書様式の作成

国交省舗装点検技術の評価方法を元に必要とされる帳票類の自動出力を行っています。


④ 舗装台帳の復元

国土交通省様式、または操作性の高い汎用デジタルマップ等で管理する手法をご提案します。

舗装台帳とは

道路の交通に支障のないように、長期にわたって維持するためには、道路の現況と経歴を詳細に把握する必要がある。舗装台帳は、この目的に即して道路の現況、経歴、および維持、修繕、改築、工事等を記録し、道路の維持の効果的、経済的な運営を計るものである。

参照:国土交通省 舗装台帳について


3.路面性状計測システムと路面下探査システムを
  1台に搭載したRoad Scan Vehicle®

RSVは1台の車両に路面下探査システムと路面性状計測システムをともに搭載しているため、1度の測定作業で路面性状と路面下空洞の同時データ取得が可能です。
これにより、路線全体の状態把握を合理的、経済的に調査し舗装構成の変化点を把握し、工区毎に舗装補修事業を計画するための基礎資料作成を可能にすると考えています。

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RSVを活用しない従来の方法

舗装補修事業を計画するための基礎資料となる舗装構成を把握するための従来の方法として、路線内のポイント毎に開削調査、コアボーリングを実施することで舗装構成、各層の厚さを把握できますが、路線全体を通して把握するには、数多くのポイント調査を行い「点から線に繋げる分析」が必要となりコストと時間がかかります。


4.「舗装維持管理計画」の精度を上げる詳細調査

RSVによる舗装評価のみでも、概略的な舗装維持管理計画は策定できますが、破損が激しい区間ではより詳細な調査を行い、類似した工区の破損予測精度を上げることが望まれます。


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出典:FDW運用マニュアル(案) (財)道路保全技術センター

舗装のたわみ量を計測するFWD調査

舗装補修事業で、設計根拠(バックデータ/エビデンスと呼ばれます)として利用される舗装のたわみ量を計測し収集します。

たわみ量や形状は、舗装の各層の構造的な強弱により変わります。たわみ量からたわみ特性を分析することで舗装の健全度判定(路床CBR、残存TAの推定)が可能となり、データに基づく適切は補修方法を検討し選定することが可能となります。

FWDとは(Falling Weight Deflectometer:重錘落下たわみ測定装置)は、路面に錘を落として衝撃荷重を与え、衝撃で生じる舗装表面のたわみ量を測定する装置です。

複数点で同時にたわみ量を測定するため、路面のたわみ形状が得られます。測定は一箇所あたり1~3分と短時間で可能です。


小口径ボアホールカメラを用いた道路下の空洞や舗装構成等の調査

主に道路下の空洞や、舗装構成の状況(舗装厚、空洞の発生深度、空洞厚、亀裂や湧水等)を観察するために開発されたボアホール・カメラシステムを用いて詳細調査を行います。

小口径ボーリングマシンによる削孔の後、スコープ状の孔内観察カメラを挿入する事で360°孔壁展開画像を深度表示しながらリアルタイムに観測します。

【 特徴 】

  • 最大深度2.4mまで計測可能
  • 特殊レンズ採用による鮮明な360°孔壁展開画像
  • 耐水圧 0.1Mpa
  • プローブ径はφ36mm(最小ボーリング口径φ40mm)
  • ボーリング孔内を深度表示しながらリアルタイムに観察
  • 地上ユニットで全てのオペレーションが可能!(昇降装置等)
  • USB端子によりパソコン表示、静止画キャプチャーが可能

▲ 詳細調査の様子
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5.インフラ長寿命化を支援する当社の取組み

路面下の空洞発生の有無を探査する路面下空洞調査と、舗装に対する健全性を評価する路面性状調査は、密接に関連していますが現在は独立した調査として別々に発注され、個別の専用車両で調査する必要がありました。

別々に発注することで、舗装路面に生じる劣化状況要因が路面下空洞による緊急性を要するものか、舗装路面の経年劣化によるものか、関連性の有無が分かりにくくなっていることが課題としてありました。

RSVは1台の車両に路面下探査システムと路面性状計測システムをともに搭載することで、1度の測定作業で路面性状と路面下空洞の同時データ取得を可能にしました。
これにより、舗装表面の状態と地中内部の状態の関連性を解析することで、舗装補修事業を計画するための基礎資料作成に取り組んでいます。


▲ 小型模擬損傷床版にてテスト走行の様子

アルゴリズムを活用した解析技術の開発

日本において高度成長期に整備された社会インフラの老朽化が進む中、人口減少や地域経済縮小、技術者の担い手不足など様々な課題がインフラ維持管理を困難にしています。そこでインフラ老朽化対策として、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において、東京大学と橋梁床板の劣化探知システムの共同開発を行いました。

開発したアルゴリズムを用いた異常診断技術と自動解析技術によって高速解析が可能となり、高速移動型三次元地中レーダ探査の高速調査と合わせることによって、コストや時間をかけずに定量的な調査を可能としました。

更なる精度の向上を図るため、北海道の苫小牧市にジオロボティクス研究所を設立、テストコースも併設しました。


遠隔監視技術の開発

騒音、振動、水質、ひび割れなどの遠隔監視技術の開発を行っております。センサを取り付け、IoT機器を用いることで測定データをクラウド上でリアルタイムに確認することができ、常時測定可能となりました。それにより異常時の早急な把握、対策が可能となります。

▼ 詳細はこちら














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