国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS(ネティス)」、橋梁点検支援技術カタログに「車載式レーダ探査車による床版劣化調査技術」が登録されました。
NETIS番号:KT-220164-A
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点検支援技術性能カタログ登録番号:BR020029ーV0023
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橋梁の床版は重量を直接受け止める部材です。
そのため長年使用することで、少しずつ内部でひび割れが発生し、水が浸入し鉄筋がさびてしまうことがあります。最悪の場合、床版が抜け落ちて車両が通行できなくなる恐れがあります。
しかし床版の上にアスファルトが舗装されていることが多いため、床版がどの程度痛んでいるのかは見た目で確認することは困難です。下側からであれば目視で確認することもできますが、重量物を載せているのは上側のため、ひび割れは上から発生することが多いとされています。
アスファルトの下にあるものを調査するためには、まずアスファルトをはがす必要があります。ただし、表面には現れない浮きやひび割れもあるため、ハンマーでたたいた音で損傷の有無を判断します。太鼓と同じで、内部に空洞があれば音が響くので目に見えない損傷であっても判別できます。 ただし、この方法は一度橋を通行止めにしなければならず、調査のために多くの人手が必要となり、さらに人の感覚で行うため結果が一様でないという課題があります。
弊社ではハード・ソフトの両面から、従来の調査方法の課題解決に取り組みました。
RSV(Road Scan Vehicle)は、床版内部の状況を高速・非接触で調査をおこなう3次元レーダ搭載車両です。3次元レーダアンテナを搭載し、最大80km/hでの高速調査が可能です。
弊社では協力業者と合わせて3台の車両を運用しています。
SUVタイプ
トラックタイプ1
トラックタイプ2
RSVによって速やかにデータ取得ができるようになりました。しかし取得したデータ結果を人間が解析していたのでは解析速度は上がらず、打音と同様に人による誤差が生じてしまいます。こちらを防ぐため、第一期SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において弊社は平成26年度から5年間にわたり東京大学他と研究に取り組み、レーダデータに対する自動解析アルゴリズムについても開発を行いました。 これにより、従来は1日単位で行っていた解析が数分で行えるようになりました。
新技術開発を進めるうえでは正解データに対してどの程度整合していたかという、精度検証が必要です。 しかし、実橋梁の損傷範囲については打音による調査が中心であるため、信頼性のある正解データを得ることが困難でした。そこで弊社では橋梁床版を模擬した試験ヤードを用意し、損傷範囲の分かっている試験ヤードにてデータ取得を行い、精度検証を行いました。 その結果、数分の解析時間で損傷箇所をほぼ抽出できることが確認されました。
弊社 ジオロボティクス研究所(北海道)に設置している試験ヤードは、どなたでもご利用いただけます。試験ヤードについて、詳しくは下記リンクよりご確認ください。
・RSVでは交通規制をかけることなく,高速・非接触で調査が可能なため、調査速度の向上が期待できます。
・自動解析では技術員の判断を介さずに解析可能なため,技術員ごとに発生しうる判定誤差がなくなり、安定的で定量的な結果が得られます。
目視・打音 | 一般的なレーダー解析 | 当社解析技術 | |
データ取得 |
数日 (低速・要規制) |
数分 (高速・規制なし) |
数分 (高速・規制なし) |
解析作業 |
不要 (ただし作業員依存) |
数時間 (技術者の判定) |
数分 (自動解析) |
とりまとめ |
数時間 (人力による描画) |
数時間 (人力による描画) |
数分 (結果貼り付け) |
土木管理総合試験所では、電磁波レーダ探査について下記特許を取得しております。
従来の鉄筋コンクリート体の非破壊検査方法としては、電磁波レーダを照射して得られた反射波データを解析者が観察することにより、鉄筋の深さ位置や間隔の推定を行っていました。
しかし、現在では車載型レーダーにより大量のデータを一度に取得できるため、より効率的な非破壊検査が求められるようになっています。
本特許で発明した手法では、鉄筋コンクリート体の内部における鉄筋の深さ位置や間隔を短時間で正確に把握することができます。
これにより、詳細検討を行う際の着目範囲を大幅に制限し、床版位置推定や床版劣化状況解析といった検討の精度向上が期待できます。
電磁波レーダを用いた異常箇所の特定は、異常箇所を短時間で正確に推定できることから広く用いられている技術ですが、マンホール等に代表される人工物が異常箇所として判別されてしまうことがありました。
本特許で発明した手法では、探査対象物に電磁波レーダを照射して得られた反射波データから人工物やアンテナ特性によって異常箇所と判断された部分をノイズとして除去することができます。
これにより、自動解析結果に対して、単純な閾値処理以上に効果的なノイズ除去を行うことが可能となり、より効率的な探査対象物における異常箇所の特定を実現します。
損傷範囲の3D化についても研究を進めています。
従来の電磁波レーダ調査方法では平面的な解析が中心で、損傷の程度を定量的に解析することはできませんでした。
しかし、自動解析で損傷範囲を定量的に出力できるようになったことで、深さ別の結果を重ねて3次元的に表現することも可能となります。従来の床版補修工事では、工事開始後に想定外の損傷が見つかり、工法変更が必要になるケースもありました。
しかし、事前にどの程度損傷が進んでいるか3次元的に推定することができれば、想定外の工法変更の可能性は低減されるはずです。
人間の健康と同じように、橋梁も異常の早期発見・早期治療が重要です。弊社の技術を用いることにより橋梁の劣化を早期に検出し、劣化が進行する前に補修を行うことができます
本技術では従来手法に比べて調査目的での通行止めや工事の削減、労働時間の短縮、費用の削減という効果も期待されています。
長期にわたってインフラを使い続けられるサスティナブルな社会のため、土木管理総合試験所では研究・開発を続けて参ります。
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