【ブログ】現場体験取材5~橋梁床版内部劣化調査編~
現場体験取材シリーズでは、当社の様々な現場を取材・紹介しています。
第5回となる今回は、社会基盤マネジメント部の「橋梁床版内部劣化調査 」の現場に行ってきました。
現場体験取材シリーズ 過去ブログ は 下記リンクよりご覧ください。 現場体験取材1 ~災害関連緊急地すべり防止事業編~ 現場体験取材2 ~建物耐震診断調査編~ 現場体験取材3 ~アスベスト調査編~ 現場体験取材4 ~表層透気試験編~ |
橋梁床版とは?
橋梁の上を通る車両の重みを、橋桁や橋脚に伝えるコンクリートの床板(ゆかいた)です。
▲ 左:コンクリート打設前、橋桁上に鉄筋と型枠を組み立てたイメージ図
右:コンクリート打設後のイメージ図
橋梁床版内部劣化調査とは?
コンクリート床版は長年使用することで少しずつ内部にひび割れが発生し、雨など水が侵入することで鉄筋が錆びます。最悪の場合、コンクリート床版が抜け落ちてしまう事故に繋がる恐れがあります。
そのため、コンクリート床版の劣化をいち早く検出・把握することにより、劣化の初期段階で予防保全ができます。これにより陥没事故を未然に防ぐだけでなく、補修コストの削減に貢献します。
しかし、アスファルト舗装されているコンクリート床版の劣化状況を見た目で判断することは困難です。
通常、アスファルト舗装の下にあるコンクリート床版を調査するためには舗装をはがし、表面には現れない浮きやひび割れを打音検査によって損傷の有無を判断します。
これにより従来の調査方法では、調査時に交通規制の必要性や技術員の技量によってデータ解析の判定結果にバラつきが生じる課題がありました。
弊社では、3次元レーダ搭載車両RSV(Road Scan Vehicle ®)を使用することで、交通規制をすることなく高速計測を可能にしました。また、損傷検知を目的とした解析アルゴリズムによる高精度自動解析技術により、精度向上と効率化を図り短時間で床版内部の損傷度を出力することを可能にしました。
▲ 左:断面から見た橋梁床版内部劣化状況
右:劣化によりコンクリートが抜け落ちた橋梁床版の調査状況
調査車両について
弊社が所有している車両型レーダの車体は、アメリカトヨタ社のSequoia(セコイア)です。左ハンドルで、 見た目もとても大きく迫力があります。
車内は7人乗りですが、データ計測のための機材が積まれており、座席数は運転席含め3席となっています。
▲ 横から見た3次元レーダ搭載車両RSV
計測中の走行車線の確認と安全走行のために車体外部にはカメラが7台設置され、運転席からいつでも確認ができるようになっています。
▲ 左:運転席に設置しているカメラモニター 右:車体に付いているカメラ
現場レポート
今回は、橋梁コンクリート床版の劣化に関する基礎データ収集の現場に同行させていただきました。
それでは当日の流れに沿って現場レポートをお届けします!
安全朝礼・危険予知活動(KYK)
業務開始前に1日の主な作業内容の確認・周知を行い、作業で危険が発生しそうなシーンをメンバーで共有します。
この日は計測対象の橋梁、 走行ルート、Uターン経路の確認、及び車線際測定時の普通車との接触防止について共有を行いました。
本調査の役割はドライバー、オペレーター、ナビゲーターの3役となっています。この日、私はナビゲーターを担当することになりました。
ナビゲーターは助手席からドライバー、オペレーター へ指示を行います。主に、後部座席で機器の操作を行うオペレーターへ調査対象橋梁の50mほど手前から「 計測開始 」、橋梁通過後50m程度で「 計測終了 」の指示出しや、周囲の状況をみて車両が安全に走行できていることを確認します。
作業開始前準備
はじめに、レーダを組み立て、計測可能な状態にします。
電磁波レーダアンテナは走行上の支障となるため、普段は車内にレーダを格納しています。
アンテナサイズが大きいと一度に可能な限り広範囲を調査できる一方、事故の可能性は高まります。移動時の安全性や雨で濡れるリスクを考慮して、格納と組み立ては現地で行うことにしています。
計測開始前にレーダを車体に取り付け、ケーブルを接続し、車内の計測用PCを起動させることで計測が可能になります。
弊社の所有している電磁波レーダは国内最大のアンテナとなっており幅2.4m、重さ約38kgあり、取り付けるだけでも相当な力仕事でした。
技術員の原さんも「 基本車両で移動してデータ計測を行うのであまり体力消費はしないのですが…ここだけは体力仕事ですね! (笑)」と仰っていました。
▲ 左:アンテナを設置している様子 右:設置後の様子
計測開始
いよいよ計測開始です。
計測は白線に沿って車両を走行させ、データを取得します。レーダ幅の関係上、一度で車線全体を計測することはできないため、車線毎に左寄り・右寄りの2回計測を行います。
オペレーターはデータ取得毎に、走行データを記録します。走行データはGPSと連動しているため把握できますが、電波の乱れや、データ取得の抜け・漏れを防ぐために記録を行います。
原さんに運転操作について伺ったところ、「初めは左ハンドルに緊張しましたが、もう慣れましたよ。ただ右側に車線規制が多いときに、右寄り走行をするときは緊張しますね。」と仰っていました。
▲ 左:計測する車内の様子 右:計測の様子
計測終了~片付け
計測が完了したら、データが正しく取得できているか確認をします。全ての計測、及び確認が終了したらレーダアンテナを取り外し、車内に格納します。ここで、本日の現場作業が終了です。
このあと、周波数データを事務所に持ち帰り、損傷検知アルゴリズムの自動解析にかけます。解析結果は取得データごとに画像として出力され、この画像データの整理を行い、概要文、考察などを加えた報告書のとりまとめを行い納品となります。
この日、現場から事務所に向かう1時間の間に損傷検知アルゴリズムの自動解析をかけ、事務所に到着する頃には、解析のほとんどが終わっており解析スピードの早さに驚きました。
さいごに
今回は社会基盤マネジメント部に同行し、橋梁床版内部劣化調査の現場へ伺いました。
「 橋梁 」という日本のインフラに欠かせない構造物の維持管理現場は、生活に欠かせないからこそ交通規制の課題や損傷の早期発見・早期対策など、「 今の生活を安全に守る 」現場の技術を体験できた1日でした。
今回現場を案内してくださったのは、社会基盤マネジメント部の原さんです。ご丁寧に教えてくださり、ありがとうございました。
▼ 技術員のご紹介
原 郁生( 社会基盤マネジメント部 )
2016年 土木管理総合試験所に入社後、SIP( 戦略的イノベーション創造プログラム )の研究員として出向。2017年に物理探査部( 現:社会基盤マネジメント部 )に配属以降、RSVを使った橋梁床版内部劣化調査や舗装厚調査、地中レーダ探査機を使った埋設管探査や空洞探査業務を行い、地域を問わず全国の現場で活躍している。
当社では、その他にも様々な試験・調査を承っております。
お打合せ、お見積、ご提案まで対応いたしますので、お気軽にご相談ください。
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