日本全国の下水道管路の総延長は約49万kmに達しており、私たちの暮らしを下支えしています。下水道事業によって整備された施設(以下、下水道ストック)は、1965年から1998年代ごろにかけて集中的に整備され、今後急速な老朽化が懸念されています。
国土交通省は、各下水道管理者が維持・修繕・改築に関する計画を策定し、点検・調査から修繕・改築に至るまでの一連のプロセスを計画的に実施できるよう支援することを目的として、「下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン」を策定しています。これにより各下水道管理者は下水道ストックを計画的かつ効率的に管理をしています。
【ストックマネジメントとは】
下水道事業におけるストックマネジメントとは、下水道施設を長く安全に使い続けるための計画的な管理のことです。下水道事業の役割を踏まえ、持続可能な事業運営を実現するために、明確な目標を定め、膨大な施設の状況を客観的に把握・評価し、将来の施設の状態を予測しながら効率的に管理していきます。
下水道事業のストックマネジメント実施フローは右図通りになります。
▲ ストックマネジメントの実施フローの例
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出典:国土交通省「下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドラインー2015年版ー 令和4年3月改定」P.17
当社では、施設管理の目標設定や、点検・調査計画および修繕・改築計画の評価と見直しの判断材料となる各種点検・調査に対応しています。
点検は、管路施設の異状の有無を確認するために実施します。
調査は、点検によって異状が発見された場合や、施設の経過年数等に応じて、あらかじめ設定した頻度に基づき計画的に実施します。
具体的な点検・調査については、清掃も含めて、合理的な組み合わせについて検討することが望ましいとされています。管路施設の調査方法の例は下表をご参照ください。
▼ 管路施設の調査方法の例
出典:国土交通省「下水道事業のストックマネジメント実施に関する
ガイドラインー2015年版ー 令和4年3月改定」P.43
2025年1月、埼玉県八潮市で発生した大規模道路陥没事故を契機に、下水道管路に起因する道路陥没事故の未然防止に向けて、国土交通省は全国の自治体に対し老朽化した下水道管路の緊急点検を目的とした「全国特別重点調査」の実施を要請しました。
道路が陥没する要因は様々挙げられますが、その一因として、老朽化した下水道管や水道管からの漏水により、周囲の土砂が管路に流れ込み空洞が生じることがあります。
現在、各自治体ではこの要請を受け、「全国特別重点調査」の一環として、以下の条件を満たす下水道管路を優先的に調査対象としています。
管径2m以上かつ1994年度以前に設置された下水道管路
さらに、対象管路の中でも、以下のいずれかに該当する箇所については、より優先して調査が実施されています。
埼玉県八潮市の道路陥没現場と類似の構造・地盤条件の箇所
管路の腐食しやすい箇所
陥没履歴があり交通への影響が大きい箇所
その他(沈砂池の堆積土砂が顕著に増加した処理場・ポンプ場につながる管路)
出典:国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査の概要」
▲ 全国特別重点調査の実施フロー
出典:国土交通省「埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没を踏まえた 下水道管路の全国特別重点調査の実施について(提言)」P.5
全国特別重点調査の実施フローは左記の通りです。
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※青色部分が点検・調査内容になります
潜行目視・テレビカメラ(ドローンや浮流式カメラ等を含む)により、管路内(マンホール含む)の調査を全線にわたり実施します。これを「管路内調査」と呼び、腐食・たるみ・破損などの劣化状況を診断します。
調査結果はスパンごとに整理され、緊急度の判定が行われます。
▲ 潜行目視・テレビカメラ調査における
緊急度の判定基準
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出典:国土交通省「埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没を踏まえた 下水道管路の全国特別重点調査の実施について(提言)」P.6
▲ 鉄筋露出
▲ 骨材露出、流水確認
▲ インパクトエコー法の測定状況
▲ 打音調査(衝撃弾性波法)における
緊急度の判定基準
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出典:国土交通省「埼玉県八潮市で発生した大規模な道路陥没を踏まえた 下水道管路の全国特別重点調査の実施について(提言)」P.8
潜行目視・テレビカメラ調査にて緊急度Ⅰ・Ⅱと判定されなかった管路は、打音調査を実施し、圧縮強度と管厚を確認します。
弊社では、シュミットハンマー・インパクトエコーや小径コアを中心に確認しますが、管径によっては専用ロボットを使って確認をします。
緊急度Ⅰ・Ⅱに判定された管路は空洞調査を行います。
空洞調査は下水道管の土被り厚に応じて調査方法が異なります。
路面化空洞調査や簡易的な貫入試験などを行い、管周りの空洞を確認します。
▲ 車載型レーダ
各点検・調査結果を診断し、劣化の進行順に全国特別重点調査の判定基準に基づき、A~Cにランク付けした上で、各種判定基準に応じた対策を確実に実施していきます。
当社では、下水道事業のストックマネジメント実施に関する定期点検・調査はもちろんのこと、全国特別重点調査においても判定基準に必要な各種点検・調査を、現場状況に応じて複合的にご提案しております。
全国各地対応しておりますので、下水道管路の全国特別重点調査についてお困りの際はご相談ください。
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